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□A wish
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「―――綱吉」
「ひ、雲雀さんっ……!」

朝。校門で朝礼活動(という名の制裁行為)をしていた並盛中学の風紀委員長……雲雀恭弥は、遅刻寸前で転がり込むように登校してきた一人の男子生徒……沢田綱吉に声をかけた。

呼び止められたツナは、雲雀を見てびっくりしたように目を見開く。

「ねぇ、今日の放課後……どうしたの?」
「っ、ぁ……!」

だが、雲雀が何かを伝えようとした瞬間、

「ご、ごめんなさいぃっ…!」

ツナは突然顔を真っ赤にしてそう叫ぶと、大慌てでその場から走り去ってしまった。いつもの鈍臭い運動神経からは、考えられないような俊敏さだ。

「………」

その場に取り残された雲雀は、駆けていくツナの後ろ姿を眺めながら、やがて小さくため息を吐いたのだった。


***


並盛最強の風紀委員長である雲雀と、何をやらせてもダメダメなツナが恋人同士になったのはつい最近のこと。
お互いの想いを伝え合い、今やラブラブなはずの二人なのだが、

「………」

ここ最近、雲雀は少し不機嫌だった。不機嫌というか、面白くなさそうな顔をしているというか。

それもそのはず、

「つなよ…」
「っっっ……!」

昼休み。雲雀は廊下で再びツナとすれ違ったが……今度は声をかける前に、ツナはまた逃げていってしまった。


どうやらツナは、かなりの恥ずかしがり屋らしい。特にそれが、好きな人間の前では。

付き合う前は、やはり一定の距離を保っていたのでまだ大丈夫だったのだが、付き合い始めて一気に距離が近くなってからは……大好きな雲雀の前では極度に緊張してしまい、どうして良いか分からなくなるのだ。顔が茹でダコのように真っ赤になり、何も喋れなくなるほど。

だから、ツナにとってはキスをするどころか、雲雀と手を繋ぐだけでも大変なことだった。


「やれやれ……」

脱兎のごとく逃げてしまったツナの背中をやはり眺めながら、雲雀はもう一度ため息を吐いたのだった。

恥ずかしがるツナはものすごく可愛いし、リンゴのように真っ赤になる姿も本当に愛おしい。自分のことを好きだということも、真っ直ぐに伝わってくる。

だが、こうも逃げられ触れることができないのはやはりつまらない。いつでも側にいたいし、いろんな話をしたいのだ。


さて、どうしたものか……と思いながらも、だが雲雀は口元を緩め笑っていた。

追い詰めて困らせるのも楽しいが、こちらももう限界だ。

そろそろ、逃げ回る小動物を捕まえようか、と。


***

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