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□Princess and phantom
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その瞬間ふわりと浮いた身体を、何者かに優しく抱き止められる。馴染んだ匂いと温もりに包まれて、ツナはドキリと胸を高鳴らせた。
「っ、ジョット……!」
「大丈夫か、ツナヨシ?」
顔を上げると、そこには誰もが恍惚とするような美貌の青年がいて。
青年……ジョットの顔を見た瞬間、ツナは大きな瞳を潤ませると、ギュッと彼に抱き付いた。
「ふぇぇっ…ジョットぉっ…!」
「ああ…恐かったのか、可哀想に。もう大丈夫だ」
「んっ……!」
ジョットはツナを優しく抱き締め、宥めるように顔中にキスを降らせていく。それだけで、ツナは気持ちが落ち着いていくのを感じた。
すると、
「ヌフフ……非常に美味しい光景ですが、放っておかれるのは寂しいですねぇ」
「っ……!」
すぐ側で、ようやく起き上がったデイモンが、二人の様子を見ながら怪しく笑っていた。寂しいと言いながら、その視線は美麗の青年と可愛らしい少年がキスする姿を熱っぽく凝視している。
先ほどの鈍い音は、ジョットがデイモンを殴り倒した音らしい。彼の頬は赤くなっていた。
デイモンが復活したことでまた怯えるツナを、ジョットは庇うように強く抱き締める。
「デイモン、貴様…俺のツナヨシに不埒な真似をして、覚悟はできているんだろうな……?」
ツナには溶けそうに甘い顔をしていたのが、一瞬で人を這いつくばらせ失神させそうなそれに変わる。だが、それでもデイモンは笑みを浮かべたまま、
「ああ…何だか久しぶりですねぇ、その蔑んだような眼差し……」
むしろ、喜びにぞくぞくと身体を震わせているようだった。
「ですが、ジョットが悪いのですよ?最近滅多に姿を見せなくなって」
「………」
「それがまさか、こんなに愛らしい方を愛でていたとは……」
そのうっとりとした視線がツナに向けられ、ジョットは苦々しく眉をしかめる。自分が原因で、デイモンがツナと出会ってしまったのが不本意なのだろう。
実際、今日部屋にいなかったのも、仕事が溜まりまくったせいでGに怒られ、ツナが寝てから書斎で片付けていたからだったりする。
デイモンはベッドの側で跪くと、そっとツナの手を取り甲に唇を寄せた。
「貴方のような可憐な方、今までお会いしたことがありません」
「え…え……?」
「どうやら私は、貴方に恋をしてしまったようです」
「っ……!」
騎士が主人にするように甲へ口付けられ、ツナはかぁぁと頬を染める。
それを見て、ジョットはさらに苦々しく舌打ちをしたのだった。