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□Princess and phantom
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月が雲に覆われた、真っ暗で静まり返った夜。

場所はすっかりお馴染みの、深い森に囲まれた巨大な屋敷。

その、美麗の支配者が住むこの神域とも言える地に、またもや招かざる客が訪れようとしていた。


「……全く、いったいプリーモは何を考えているのでしょうか。最近滅多に姿を見せないで…この私に会いに来ないなんて……」

深い森を抜け屋敷の前に現れたのは、変わった髪型をした若い男だった。どこかの貴族のような衣服に身を包み、颯爽と歩いてくる。

「ヌフフ……ここはやはり、私から会いにいくべきでしょうね」

さらに変わった笑い方をすると、その人物は真っ直ぐに屋敷の玄関……には向かわず、広大な屋敷の裏手へ回った。そこから最上階……一際豪華なバルコニーのある部屋を見上げ、突然地を蹴る。
そのまま重力を感じさせない身のこなしで、男は一階、二階と次々にバルコニーへ飛び継ぎ、ついに目当ての場所へ降り立った。

部屋へと続く大きな窓からは、カーテンが邪魔をして中の様子が見えない。だがそこは真っ暗で、部屋の主人は恐らくもう寝ていると思われた。

「ヌフフ……」

窓には鍵がかかっていたはずだが、一体何をどうしたのか、男が取っ手に触れるとそれはいとも簡単に外れる。音を立てないようにそっと開いて、真っ暗な室内に忍び込んだ。
そして、真っ直ぐにベッドへ向かった。

暗くて良く見えないはずだが、男には部屋のどこに何があるのか分かっている。なぜなら、何度もこの部屋に忍び込んだことがあるからだ。

表情は見えないが、男はどうやら怪しく笑っているらしい。

ベッドに近付くと、掛け布団が盛り上がっていて、人が寝ているのが辛うじて分かった。

(変ですねぇ……いつもなら、私が来たことに気付いているはずですが)

男は首を傾げたが、まぁ良いかと布団に手を掛けた。

「ヌフフ…起きて下さいプリーモ……貴方のD.スペードが会いに来ましたよ」

男……ボンゴレ初代霧の守護者であるD.スペードは、そう言うと布団を剥ぎ取った。

「ん……?」

その時ちょうど雲が晴れ、隠れていた月が姿を見せたため部屋が少し明るくなる。そのおかげで、ベッドに寝ている人物の姿がはっきりと浮かび上がった。

「え……?」

布団を握ったまま固まるデイモン。何故なら、そこにいたのは目当ての人物ではなかったからだ。

ふわふわした薄茶色の髪に、閉じられていても分かるほど大きな瞳。華奢な身体を大きめのカッターシャツで包んで、下はブリーフのような下着しか身に付けていない。

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