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□Bow-wow!
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その男は長身に引き締まった身体を、黒を基調にした制服のような物に包んで、堂々と、むしろ踏ん反り返ってソファーを占領していた。髪も漆黒で、一見すると全身真っ黒に見える。
だが、その中で一際目を引く鋭い瞳は、血のような深紅色をしていた。
ぴくりとも動かず、ただじっとツナを見据えているその男は……ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーのボス、ザンザスだった。
そして、何よりもツナを困らせているのは、実はこの男だったりする。
(し、視線が痛い……)
ザンザスはツナがボンゴレ本部に来てからというもの、部屋で勉強したり外で訓練していたりすると、ほぼ毎日のように現れては、ツナの様子をじっと眺めているのだ。
別に何をするでもなく黙っているのだが、ツナにとっては気になって仕方がない。というか、黙って座っているだけでもかなりの威圧感で、かなり怖い。
そうして彼は、ツナの勉強や修行が終わるまで、ずっとそこにいるのだった。
……それだけならまだ良いのだが……。
「おい、ぼーっとしてないでさっさとやれ」
「いてっ」
ザンザスの方を気にしていたら、リボーンに叩かれてしまった。ちなみにリボーンは、ザンザスのことを気にしていないのか、または無視しているのか、全く構うことはない。
(参ったなぁ……)
もう一度だけちらりと視線を向ければ、目が合った瞬間射殺されるのではないかというくらい睨まれて、ツナは慌てて机に向き直ったのだった。
***
それから、リボーンは本当に全ての問題が解けるまで許してはくれず、ようやく終わった頃には日はとっぷりと暮れていて。
「ぅぅぅ……」
さっさと部屋から出ていった家庭教師と違い、机に突っ伏したまましばらく動けないでいるツナ。
そして、
「………」
「………」
やはり黙ったまま、まだ部屋に居座っているザンザス。二人きりになったため、その気まずさ……むしろ重圧感は半端ではない。
「あ……ああー疲れたなぁ!今日はもう寝よっと!」
わざとらしく、独り言のように言って、ツナはそそくさと立ち上がった。実際、疲れ過ぎて早く眠りたいのは本当だったのだが。
しかし、寝室へと続くドアを開けた瞬間、
「う、わっ…!?」
それまで動かなかった男が、動いた。
「ぎゃぁっ……ぶふっ!」
まるで猫を捕まえるように首根っこをつかまれて、そのまま放り投げられる。宙を舞ったツナは、ベッドの上に顔面から突っ込んでしまった。