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□Bow-wow!
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小さい頃から、犬は大の苦手だった。
吠えられるし、追い掛け回されるし、のしかかられて顔中舐め回されるし。
……けど、この場合は……一体どうすれば……。
***
広大でどこまでも深い、森の中にそびえ立つ巨大な屋敷。
「ひぃぃもう嫌だぁぁっ!」
その屋敷の一角のとある部屋から、少年の悲痛な叫び声が響いた。
落ち着いた色合いの壁と照明、分厚い絨毯に品の良い調度品が所々置かれた広い部屋。
その奥にある、これまた荘厳な机の前に座って、少年……沢田綱吉は、机の上に積まれた大量を前に泣きべそをかいていた。
その傍では、黒のスーツにボルサリーノを身に付けた赤ん坊が、本を手にその様子を眺めている。
「リボーンっ、俺もう無理だよぉ……!」
「泣き言言ってんじゃねぇぞダメツナが。全部解けるまで終わらせねぇからな」
「そんなぁっ…!鬼!悪魔っ!」
机に山積みになった問題プリントを見て、ツナは情けない声を上げたのだった。
(何でイタリアにまで来て、こんなことしなきゃなんないんだよぉっ!俺、マフィアのボスなんかになるつもりないのに……!)
そう、ここはツナの祖国である日本ではない。イタリアの、そしてあの巨大マフィアボンゴレファミリーのアジトだった。
季節は真夏の真っ最中。学校も夏休みで、一日中家でゴロゴロしていたのだが……この鬼畜でドSな家庭教師に、いきなりイタリアに連れていかれ(拉致とも言う)たのだ。
長期休暇を利用して、将来ツナの物になるであろうこの屋敷で、ねっちょり勉強、修行をするのが目的らしい。
無理やり連れてこられてから約一週間。毎日毎日朝から晩まで勉強、修行、勉強、修行の繰り返しで、ツナはもうヘロヘロになっていた。
(そりゃ、イタリア料理は美味しいし、たまに観光とかさせてくれるのは良いけどさ……)
他にも、兄貴分であるディーノが遊びに訪ねてきてくれたり、良いおじいちゃんである九代目とのんびりお茶をしたりと、決して嫌なことばかりではないのだが……住み慣れた土地を離れ、家庭教師に絞られる日々はかなり辛いものだった。
(それに……)
疲れ切っている原因はそれだけではない……プリントと格闘しながら、ツナは視線をちらりと別の所へ向けた。
客人であるツナに用意された豪奢な部屋。その真ん中にある、これまた豪華なふかふかのソファー。
「………」
そしてそこには、一人の男が座り、じっとツナのことを見ていた。いや、睨んでいると言った方が正しい。