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□Which is which?
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とある世界のどこかにある、深い深い森の中。
鬱蒼とした木々に覆いつくされた、昼間でも少し薄暗いその森の奥深くに、
「……あー、お腹空いたなぁ……」
何とも小さくてか細い、というか情けない声が響いた。あまりにも小さ過ぎて、風に擦れる木々の葉の音でほとんど聞こえない声が。
そこには、
「……本当に、こんな所にあるのかな?」
十代半ばかそれよりも幼く見える、小柄な少年のような人物がいた。フワフワと重力に逆らった柔らかい髪に、大きな瞳。
身長が低いだけでなく、全体的に華奢で細いので全てが頼りない。
少年のような、と言った。何故なら、見た目は確かに幼くて小柄な少年で間違いないのだが……それが少し、いやかなり普通とは違っているからだ。
というのも彼は、大人と並べば見下ろさなければいけないくらいの身長なのだが…今は、その目線がかなり高い位置にある。そして、足は……地面に着いていなかった。
というか……宙に浮いていたのだ。フワフワと。
少年の背中には、黒くてトゲトゲとした羽根が生えていて、それがパタパタと動いている。恐らく、それで宙に浮いている、というか飛んでいるらしい。
それだけでなく、耳は人間の丸いものとは違い尖っていて、さらにはお尻からも黒くて細長い……先にトゲのようなものが付いた尻尾が生えていた。
つまりは……人間ではなかったのだ。
「それにしても、不気味な所だなぁ……悪魔の俺が言うのも変だけど」
フワフワと飛ぶ、というよりはヘロヘロで今にも地面に落ちそうな悪魔……ツナは、どこまでも続く薄暗い森にげんなりしとながら言った。
そう、ツナは悪魔だ。この世界ではない“魔界”と呼ばれる別の次元からやってきた、正真正銘の。
何故、異世界の住人である彼がここにいるのかというと……
……まぁ、魔界にもいろんな事情やルールや掟なんかがあって、とにかく、いろいろとあるんだろう。詳しいことは謎なのだが、恐らくは。
そんなツナは、現在……猛烈にお腹が空いていた。
他の悪魔がどうなのかは分からないが、ここで必要になるのは生き物の“生気”だ。そしてツナの場合、一番の好物というか、エネルギー源になるのは……生きた人間のそれである。
他の動物や植物からも摂取できるのだが、それだけではとてもじゃないが物足りない……とにかく、そういうタイプの悪魔なのだろう。