Main2
□Incomprehensible
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光沢のある無機質な壁に囲まれた、どこかの広い空間。ただ、いたる所に太いパイプやコードが通って、床には何かの機械や工具がたくさん散乱しているので狭く感じる。
照明は明るいが、そこは地下にあるため窓はなく、今が昼なのか夜なのかも分からない。人の声はしないが、工具を使う少し大きな音、そして空調か何かなのか、遠くから微かに聞こえる地鳴りのような低い音が混じり合っていた。
そんな、どこか閉鎖的な空間の隅っこで、
「………」
小柄な少年……ツナは、そわそわと落ち着きなく床にうずくまっていた。その表情は不安げで、ちらちらと視線をさ迷わせ部屋を見回している。
服装は、何かの作業着のツナギという普段とは違う格好で。しかもサイズが大きすぎるのか、手足の裾はかなり余っているし、胸元は締めていても大きく開いていた。
そんなツナは、何度か身体を伸ばして、何か言葉を発しようとしては思い止まり、またうずくまるという行動を繰り返していた。
だが、とうとう我慢できなくなったのか、
「っ、あ…あの……!」
少し遠慮しがちに、だが機械音に負けないように声を出した。視線の先、声を向けた方向……機械音のする方へ身を乗り出しながら。
そこには、ツナに背を向けて何かの機械を作る男がいた。ツナと同じ作業着姿で、金色の癖のある髪に大きな身体は、日本人ではなさそうだ。
そして、その人物はツナの言葉に気が付かなかったようで……ツナは、もう一度声を掛けた。
「あのっ…す、すみません……!」
だが、それでも男はまだ気付かない。よほど作業に集中しているらしい。
とうとう、ツナは声を張り上げた。
「すみません!あのっ……っ、スパナさん!」
すると、ようやく男の手が止まって機械音も止んで、ゆっくりとツナの方を振り向く。着けていたゴーグルを額にずらせば、鋭いのか眠いのか良く分からない瞳が現れた。
口からは細いスティックが伸びていて、それは飴だったりする。
「……何?ボンゴレ」
スパナと呼ばれた男は静かな口調で、感情の読めない表情で聞き返した。
「ぁ…え、えっと……」
その瞳に見つめられて、声を掛けたのは良いものの、ツナは口籠もってしまってなかなか言い出せない。しばらくしてようやく、
「こ、これ…外して、下さい……」
自分の両手を少し上げると、スパナに見せた。そこには金属の手錠がはめられていて……ツナは躊躇いがちに、だが懇願するように言う。