From flowery bowers
□第4章
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知識や経験、意識、ものの見方や考え方。
たとえ、年齢によるそれらの差が大してなかったとしても……
俺とアイツの間には……どうしようもない、決定的な差がある―――――
***
―――――妙な夢を、見た気がする。
「………」
夢って言っても、ほとんど何も覚えてなくて……ぼんやりと奇妙な感覚というか、気怠さが残ってるというか、そんな曖昧なもので。
ただ何となく、心地いいような、けど酷くもやもやするような……本当に訳が分からない夢だったんだが。
「……あー」
全身に漂う気怠さと同時に、一部にとある違和感を覚えて……ベッドから上半身を起こして見てみると、
(……またかよ)
面倒なことに、男としては避けられない事態が自分の身体に起こってた。
いや、避けられないというよりは生理現象で、むしろ正常な状態なんだろうけど。今までも、ちゃんと定期的に……人並みには催してたから。
けど、気になるのは……最近それが、純粋な生理現象じゃなく、意味のあるもののような気がしてならない。それは明らかに、近頃多くなった夢見の悪さから来てるもので。
はっきりとしないから、苛々する―――いや、ぼんやりとは分かってるんだが。
ただ、原因は分かっても根本の理由が分からないから……余計に苛々するんだ。
「チッ……」
辟易としながら、意志に反して熱を持った己の分身を半ば強引に収めるために……仕方なく、そこに手を伸ばした。
***
「……だりぃ」
休み時間。がやがやする教室の中で、自分の席に突っ伏してそう呟く。
暑くはない。どこの学校もそうだろうけど、こんな金持ち校ならなおのこと当然のように、どの教室にもクーラーが完備されてる。
しかもどんどん暑くなってきたって言っても、山の中にあるから他と比べればまだマシだろうし。
だから、これは暑さでへばってる訳じゃない。
「………」
ちらっと真ん中の方の席を見れば、獄寺も気怠そうに座って……いや、あれは前からそうだったか。
クラスの中を見ても……元気に騒いでる奴も多いけど、やっぱりちらほらと似たような奴らがいた。
六月の下旬。梅雨の真っ最中で、週の半分は雨か良くても曇り。気温は高かったり低かったりバラバラだけど、湿度が高いからじめじめと気持ち悪い。
いくらここがまだ涼しい方だとしても、これから真夏にかけてが一年で最も過ごしにくい季節だろう。