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□共通点
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「「―――綱吉」」
早朝。心地よい眠りに包まれていると、朝日の差し込む部屋に二つの声が重なって響いた。次いで、布団を捲られて肩を軽く揺すられる。
「ん……」
意識が浮上してゆっくりと目を開けば、そこには二人の人間が顔を覗き込んでいた。
一人は濡れたような漆黒の髪に切れ長の瞳の、学ランを着た男。もう一人は藍色の髪を少し変わった髪型にして、瞳の色が左右で違う男。
どちらも高校生だろう。制服は違うが、二人とも酷く整った顔をして、女の子にモテそうだ。
「ぁ……」
綱吉と呼ばれた少年はまだ中学生くらいで、こちらはふわふわの髪に大きな瞳の、女の子のような顔をしていた。
綱吉……ツナは、自分を覗き込む二人をまだ寝呆けた様子で見上げると、
「おはよぅ……恭弥おにぃちゃん、骸おにぃちゃん」
「おはよう。そろそろ起きな」
「おはようございます。早くしないと、また遅刻してしまいますよ」
寝起きの舌っ足らずな声で挨拶をすれば、それぞれ名前を呼ばれた二人が返す。二人とももう学校指定の鞄を持っていて、家を出るところなのだろう。
「僕は風紀委員の仕事があるから、先に行くよ」
「僕も、生徒会で会議がありますから……朝食を用意したので、ちゃんと食べるのですよ」
「ん、はぁい……」
ようやくもぞもぞと動き始めたツナに、二人は薄く微笑むと、同時に部屋を出ていった。
黒髪の方が恭弥で、近くの並盛高校で風紀委員長を務めている。オッドアイをもつ骸は、隣町にある黒曜高校の生徒会長だ。
この二人、実は双子の兄弟だった。といっても、顔はどちらも美形であるが全く似ていないし、性格や趣味も全く違うのだが。
そして、
「早く、準備しないと……」
パジャマ姿でベッドから降りたツナは、そんな二人の弟だった。
ただし、血は繋がっているが本当の兄弟ではない。従兄弟なのだ。
ツナの両親は、彼が幼い頃に他界した。一人になってしまった彼は、親戚である恭弥と骸の両親に引き取られたのだ。
それからツナは、この家で二人の弟として育てられた。
***
兄達が用意してくれた朝食を食べて、ツナは慌ただしく家を出た。近くの並盛中学校へ通っているのだが……その足取りは少し重い。
ツナには、友達という存在がいなかった。
幼い頃から勉強や運動、何をしても上手くできなくて。虐められることはあまりなかったのが、仲の良い友達ができることもなかった。