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□気になる彼の二面性
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だがその表情は、これまでツナが見たこともないような……目を細め口の端を歪めて、残虐そうな笑みを浮かべていたのだ。
それだけでなく、彼の手に握られている物も非常に気になってしまう。持ち手の付いた、長い革製の紐みたいなものは、もしかしなくても鞭だろうか。
(あ、あれぇ……?)
別人のようになってしまったディーノに、そして何やら既視感がありまくる状況に、嫌な汗が滑り落ちる。こんなこと、以前にもなかっただろうか。
「……ツナ」
「っ……!」
「悪さをしなければ、見逃してやろうと思ってたのになぁ」
語りかける声音は相変わらず優しいのに、それが逆に恐怖を感じてしまう。言葉の意味も、パニックになっているツナには理解できなかった。
ただ一つ、分かっていることは……
「けど、悪いことをする奴には……お仕置き、しねぇとな?」
ここにいるのは、あの優しかった兄貴分ではなく……加虐性を露にした、悪魔のような男だった。
(こ、これが……ギャップ、萌え……)
呑気なことを言っている場合ではないのだが……逃げ場がないと悟ったツナは、そんなことを考えるしか、最早できなかったのである。
***
「んんっ、ぅ……く、ふっ……!」
簡単に言ってしまえば、ディーノも本来の職業はエクソシストであり、ツナを初めて見た時から、悪魔であると分かっていたのだ。
ディーノは表向きは教会の神父だが、実際はキャバッローネの町を裏でまとめる退悪魔組織のトップだった。組織のボスとしてエクソシストとして、町を悪魔から守っているのだ。
特に夜に姿が見えなかったのは、要するに裏の仕事をするためだったのだろう。
そんなことは全く気付かずに、のこのことやって来たのは弱い悪魔のツナだ。自分の生気に釣られてやってきたことは、ディーノも分かっていた。
だが、機会をうかがっているのか足繁く教会に通ってはうっとりして帰っていくツナを見て、まぁ良いかと放っておいたらしい。他の人間に悪さをすることも、町を破壊することもない(そんな力もないが)ちっぽけな悪魔を、わざわざ退治する必要もないだろう、と。
「けど、まさか本当に俺を襲ってくるとはなぁ……積極的じゃねぇか、ツナ」
「んぅぅぅっ!」
空気を切るような音がして、次いでピシャリと何かを打つ乾いた音が響いた。ディーノが、手に持った鞭をツナに向かって振り下ろしたのだ。