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□A passion
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目元を覆われて拘束されているので、何となく人がいる方に向かって話すしかない。見えない不安に駆られながら、ツナは必死に抗議した。

「こんなっ……あ、あ、アダルトビデオみたいなのを撮影して、ネットで公開するなんて!」
「だから、AVとは違うと何度も言っているだろう。これは、ただのサンプル映像だと」
「一緒だーっ!」

そう、ツナがこんなことになっているのは……商品のPRをするための、ビデオ撮影のせいだった。

このご時世、いくら商品の画像や言葉でPRしても、それだけでは商品購入になかなか繋がらない。そこで、使用感というか、実際の使い方や生身の人間が使っている様子を短い動画にして、インターネットで見られるようにすれば……店頭販売だけでなく、ネットショッピングでの売り上げも期待できる、ということである。

動画自体は長くないし、被検者(つまりツナ)の顔も映らないようにするのだが……

それでも、自分の身体は撮られてしまう訳で(それも裸体という極めて恥ずかしい姿を)。しかも、サイトのページに数分間のビデオを載せるだけでなく…グッズの限定版の付属で、そのDVDを付けることもあって……完全にAVではないか、とツナは全く納得していなかった。というか、普通に嫌に決まっている。

そんな、明らかに怪しくて危険な企画に……入社して数ヶ月もしない間に、ツナは何故か業務の一つとして無理やりさせられていた。月に数回、酷い時は一週間に一回程度の割合で。

だからこそ、ツナは一人で残業をするのが嫌だった。営業部や開発部へ行くのが怖かった。一人でいれば、こうやって捕まって連れていかれるから。
特に、この男に見つかった時は……次はどんなことをさせられるかと思うと、身体が震え上がるのだ。

嫌な予感はしていた。やはり今日の昼間、営業本部へ行った時に……この男が部屋にいて、訪れたツナを見ていたのだ。その鋭い視線で。それで、また新しい製品を試そうと思ったに違いない。

いや、誰がどう考えてもセクハラをぶっちぎりで通り越して、最早犯罪だ。被害者として、間違いなく訴えられるレベルなのだが。

「ほう、嫌なのか」
「っ……!」

その時、より声音の下がった男が近付いてくる気配がして、抵抗していたツナが身体を強ばらせた。見えなくても、ベッドの隣まで来た男に鋭い視線で見下ろされているのが分かって、剥き出しの肌が粟立つ。

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