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□An excuse
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だから、命の危険を感じて真っ青になってしまうのは仕方がないだろう。
だが、
「チッ……」
「っ、ぇ……」
しばらくして、銃を取り出すのかと思われるように動いたザンザスの手は、懐ではなく……
「「「!」」」
恐らく、ツナだけでなく誰もが驚愕しただろう。ザンザスが、ルッスーリアの手から薬を奪って……口の中に放り込んだのだから。
そしてちゃんと水で流し込んだ後、済んだとばかりにまたごろりと寝転がったのだった。
(う、うそ……)
まさか、あのザンザスが他人の言うことを…それも敵?であるツナの言葉を聞くなんて……ツナは、しばらくぽかんとしたまま固まってしまったのだった。
そして、
(……で、何で俺がザンザスの看病をすることになるんだよぉぉっ!)
それから、何だか良く分からないがザンザスが自分をカッ消さないうちに帰ろうと思っていたツナは、ヴァリアーの面々に頼まれた。泊まり込みで、ザンザスの看病……というか世話を焼いてほしい、と。
恐らく、先ほどザンザスが素直にツナの言うことを聞いたからだと思うが……
(だからって、二人きり……)
薄情なことに、あっさりと自分の病室やらホテルやらに帰ってしまった彼ら。こうして、夕刻が近付くにつれてどんどん静かになっていく病室の一つで、ツナは暴君と呼ばれる男と一緒にいるのだった。
「………」
「………」
ザンザスは滅多に喋らない。喋っても「あ゙?」だの「チッ」だの「ウゼェ」くらいで怖いのだが、黙っていればそれはそれで怖い。
だが、
「………」
少しだけ起こしたベッドに、尊大に……どこか気怠げに身体を預けているザンザス。その血のように赤い瞳は、今は少しずつオレンジ色に染まりつつある空に向けられていて。
何を考えているのか分からない、怖いのは変わらないのだが……ツナは、先ほどよりも自分が落ち着いているのを感じていた。感でしかないのだが、今のザンザスならこうしていても大丈夫だろうと思うのだ。
でなければ、何が何でも逃げ出していただろう。
それに、
「………」
何だかんだ言って、看病を引き受けたのは……
「……ザンザス」
躊躇いがちに名前を呼べば、ぴくりとも反応しないが睨み付けてきたりもしないザンザス。聞いているのか不安だったが、ツナは続けて口を開いた。
「その…ありがとう、ね……皆のおかげで、戦いに勝つことができた」
「………」
「だから、ずっとお礼を言いたくて……」