蜘蛛の糸に絡まった兎ちゃん

□変わり果てたその姿は
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キルアが、帰ってきた。


「キル……ア?」

『…………』

「おいキルア!!」


本当にキルアかと疑うほど、なにもうつしていないような瞳で俺の声にも反応せずミルキと独房に行ってしまった。


「…キルア」

『行ってこい、カンナ。やりすぎないように見張ってくれないか』

「シルバさん…俺、キルアにすげぇ甘いよ?」

『わかっているさ、それがお前だ』


何もかもお見通しって訳か。
少し悔しいけどせっかく許可がおりたんだ、独房に行こう。
俺が独房に着いた頃にはもうすでに“お仕置き”が始まっていてキルアの身体に鞭で叩かれた傷がいくつもある。


『少しは反省したか?それとも減らず口をたたく元気もなくなったのかな?何とか言えよ』

『すー、すー…』

『お、起きろぉぉ!!』

『ん…?あぁ、兄貴おはよ。今何時?』


キルアが寝ていたことがそんなに癇に障ったのか、ミルキはライターを取り出しキルアの肌に押しつけた。


「……ミルキ」

『良い気になるなよ、キルア』

『あちち、そんなぁ俺すげー反省してるよ。ごめん、悪かったよ兄貴』

『嘘つけぇ!!』

『………やっぱ分かる?』

『こいつ…!!――――――キルア、良いこと教えてやろうか?』


お前の友達とやら、家に乗り込んできて執事室の近くまできているらしいぜ。

ミルキがニヤニヤとしながら言った言葉に少し安心する。
友達、出来たんだ。


『物好きな連中もいたもんだよなぁ。へへっ、それともただの馬鹿なのか』

『………』

『どうする?キル。もしもさぁ、俺がママに頼んで執事たちに命じてもらえば3人ともあっという間に―――』


バキッと左の鎖を引きちぎったキルアにミルキは大げさにビビる。


『いいか?ミルキ……3人に手を出したら―――殺すぜ』

「ミルキ、ほんとにするなら……俺も黙っちゃいねぇよ?」

『う……』


コンコン


『入るぞ…もうその辺にしとけ、ミル』

『っでもゼノじいちゃん!!コイツ全然反省してないんだぜ!!』

『そんなことはわかっとる。キル、もう行っていいぞ』

『はーい』


次々と鎖を壊していくキルアは反省はしてないけど悪いとは思ってる、と言った。
だから大人しく殴られてやったんだと。
普通に考えれば今のように鎖を壊して逃げることもできたはずだからな。


『キル、シルバが呼んどるからな』

『親父が?…わかった』

「キルア、おいで」

『…子供扱い、すんなよな』


ちょっと見ない間に随分とマセ餓鬼になったなぁ。
と思ったけど、大人しく俺の方に来る様子を見て変わってないとも思う。
ギュっと抱き締めると俺より背が高くなった事が嫌でも分かり、少し寂しい。
俺にべったりだった頃からコイツは成長したんだ。


『カンナ姉……ごめん』

「別に、家を出たことを怒ってるんじゃない」

『なら……』

「俺に相談しないで行ったから、怒ってんだよ」

『っ……』

「親と話して無理だったら相談しろって言ったのにさ」

『ごめん……』

「そうすりゃ、家出の手伝いしてやったのに」

『『はあ?!』』

『全く、この娘は……』

「俺も家出してきたし……。っと、シルバさんのとこ行かねぇと」


ミルキたちにじゃあなと言ってキルアの腕を引き独房を出る。
その後着替えをすませたキルアとシルバさんの部屋の前に行くと酷く緊張したキルアが部屋に入るのを迷っていた。


「……」

『キルか、入れ』

『っ』

「シルバさん、キルアいじめたら本気で殺すよ」

『そう警戒するな大丈夫だ』


まぁシルバさんならきっと大丈夫だから俺は部屋に帰ることにしてその場を離れた。


「キルア、行っちゃうのかなぁー……」



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