蜘蛛の糸に絡まった兎ちゃん

□可愛い弟はいずこへ
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静まり返る夜、俺とイルミはある屋敷に来ていた。


『終わった?』

「うん」

『じゃあ帰ろうか』


部屋には俺とイルミ、それから数人の死体が転がっている。
ゾルディックにきてからもう1年半が経ち、1年前から暗殺の仕事を手伝っているのだ。


「イルミ」

『なに?』

「寒い」

『うん』

「マフラー貸しt」

『やだ』


即答、悲しすぎるぞオイ。今は真冬でイルミはコートにマフラーに手袋までつけているにも関わらず俺はいつものショート丈着物に羽織姿。
寒すぎる。なんで俺は着物しか持ってないんだ。


「可愛い妹分が凍え死んでもいいってのか」

『死なないよ、だって君去年もその格好で乗り越えたじゃないか』

「・・・」

『・・・仕方ないなあ』


めんどくさそうにつぶやいたイルミはマフラーの半分を俺の首に巻いてくれた。


『これで俺も寒くない』

「っありがとイルミ!」


そういえば神威と神楽と3人でマフラー巻いたことあったっけ。明日は街に出掛けてキルアとカルトと3人でマフラー巻こうかな。
にこにこと明日の予定を考えながらいつの間にか着いていた玄関をくぐると顔から血を流すキキョウさんとわき腹が血で染まっているミルキがいた。
それから珍しく慌てているゴトー。


『・・・なにがあったの』

『イルミさま!!キルアさまがお二方を刺して家を飛び出しました・・・』

「キルアが、家出・・・?」


家族を刺して家を飛び出たというキルア。ズキッと胸に痛みが走る。
神威に似ているな、なんて・・・俺と神威が家を出た時、神楽はこんな気持ちだったのかな、なんて・・・つい自嘲染みた笑みがこぼれた。


『・・・』

「イルミ・・・?どこ行くんだよ」

『父さんのとこ』

「俺も行く、ゴトーは二人を頼む」

『かしこまりました』


イルミについてシルバさんの部屋に入れば待っていたかのように構えている。


『来たか、イルミ』

『うん』

「どうすんの?」

『キルはハンター試験に出るようだ』

『え?そうなの?』

『お前も次の仕事の関係で資格が必要だろう』

『わかった、様子見てくるよ』

「はんたー?」


なにそれ?そう言って首を傾げればイルミの目が微かに見開かれ、シルバさんは『あぁ、お前は知らないな』と俺の頭をポンポンと撫でて説明をしてくれた。
試験を受けて合格したらハンターライセンスってカードをもらうんだとよ。
入れない国にもはいれるようになるらしいし、なにかと便利な資格らしい。


「俺はいいや」

『・・・予想外だな』

「ここでキルアの帰りを待ってるよ」

『そうか』

『カンナは行くって言うと思ったから驚いたよ』

「イルミ驚いてんのかわかんねーよ」


いつもの調子でさらっと言うイルミに苦笑いで突っ込むとなぜか両頬をつ摘まれた。
むにむにと触られ、ぎゅーっと引っ張られ・・・何がしたいのか分からない。


「い、イルミ・・・?」

『なんでカンナはそんなにすぐ表情変わるの?』

「なんでって・・・俺だから」

『は?』

「表情があまりかわらないのがイルミだろ?俺みたいに表情コロコロかわるイルミとか嫌だし」

『・・・あっそ』


なんなんだ一体。急に俺の頬から手を離して部屋を出て行ってしまった。


「・・・照れてる?」

『だろうな』

「やっぱ?最近イルミのこと分かってきたかも。」

『そうか』


俺、シルバさんの表情も分かるようになったんだぜ?すんごい柔らかくなったし。
ニカっと笑って部屋を出た俺はすぐにカルトの部屋に向かう。


「カルト」

『あ・・・姉さま・・・』

「キルアは帰ってくるよ」

『うん・・・』


よし、明日はカルトと街に行ってマフラーを巻こう。



 

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