蜘蛛の糸に絡まった兎ちゃん

□どの世界もパパはいい人
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『カンナ』


朝食を済ませ、部屋に戻ろうとした時に名前を呼ばれて振り返る。


「シルバさん?」

『少し話をしないか?』

「・・・いいけど」


話をしようというシルバさんについて部屋に入り座るよう促された。


『単刀直入に言おう、イルミの嫁に来ないか』

「・・・はあ?」

『お前は十分過ぎるほど強い、相応しいと思うんだが』


何の話かと思えば嫁ェェ?!何でそうなった。まじで。


「無理だよ。俺、大事な奴いるから」

『大事な奴とは?』

「有名な盗賊の一人」

『・・・幻影旅団か』

「相手が俺を嫌おうと、俺にはアイツしか考えらんないし」

『そうか・・・残念だが、仕方ないな』


本当に残念そうにするシルバさんに少し罪悪感を感じてしまう。


「せっかくだけど、ごめん・・・」

『いや、いいんだ。ただ、キルもカルトもなついているからな』

「可愛いなーあの二人。なんなんだアレ」

『お前が来てからすごく楽しそうだ』

「教育方針的には俺って邪魔、だよな?」


イルミが以前“殺し屋に友達はいらない”って言ってたし、きっと余計な感情を持たせることをよく思ってないだろう。


『キキョウとイルミはよく思わないだろうか俺や親父は感謝している』

「感謝?」

『ああ』

「・・・俺、ここにいて迷惑じゃない?」

『なぜそう思う?』

「だって、シルバさんたちからすりゃ得体の知れない奴だぞ?」

『たしかに、調べてもお前の情報は何一つない』

「じゃあなんでここに置いてくれんの?」


自分で聞いてて不安になってきた。蜘蛛では全部話してたし、なんせ突然現れた俺をふーたん達は見てたから信じてくれてた。


『理由がいるか?まぁあえて言うなら、イルミが連れて来たからだな』

「イルミ?」

『アイツが他人を連れてくるのは初めてだから興味が湧いた』

「興味、ねぇ・・・シルバさん、俺この世界の人間じゃないんだよ」

『ほう・・・』

「てか、人間じゃない。キルアにはちょっと話したけど夜兎って種族。」


俺が戦闘種族であること、父親とのこと、義兄妹のこと、海賊であること、ある装置でこの世界に飛ばされここで生きると決めたこと、蜘蛛で起こったこと、全部話した。
シルバさんは無言で頷いて真剣に聞いてくれている。


「もう記憶は戻ったって知り合いから聞いたけど、戻る勇気なんかねーし・・・」

『そうか、なら心が強くなるまでここにいればいい』

「っ・・・あり、がと」

『ところで、お前は実の父親が嫌いか?』

「大好き」


即答してちょっと後悔。恥ずかしすぎる。
照れ隠しに笑えば大きな手で頭を撫でられる。


『・・・そうか』

「父さんは悪くないんだよ。父さんから母さんを奪った人間が・・・悪いんだ」

『なら、人間が嫌いか?』

「弱い人間は嫌い。あと、人間はすぐに俺たち一族を否定する・・・それが吐き気がするほど嫌だ」



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