蜘蛛の糸に絡まった兎ちゃん

□はじめまして毒入り料理さん
1ページ/1ページ


「ここ・・・?」

『うん、そうだよ』

「クソ坊っちゃんかお前!!」


目の前にはドォォォンとでかい屋敷。
イルミはこてんと首を傾げて『どうしたの?』と言っている。くそ、可愛いなおい。


『そうだ、母さんが騒ぐと思うけど気にしないで』

「はいはい」


ガチャリと扉を開けて入るイルミに続いて屋敷に入れば急に突進を受ける。


「?!」

『まあァァァァァ!!』

「え、ちょ・・・」

『貴女がカンナちゃんかしらぁ?!』

「まぁ、はい・・・」

『やっぱりそうなのね!!』

『母さん少し黙って』


身長差30pはある女の人に痛いほど抱きしめられるってなかなか辛い。
背中なんてバキバキ言ってる。


『わたくしはキキョウと言いますわ!!』

「キキョウ、さん?すんごい苦しい」

『まあ!!ごめんなさい』

『母さん、カンナ疲れてるから部屋で休ませたいんだけど』

『イルミの隣の部屋でいいんじゃないかしら?』

『わかった、カンナ行くよ』

「うん」


キキョウさんから解放された俺はイルミについていき部屋に通された。
やっぱり金持ちだと改めて思わせる部屋、ベッドもトイレもバスルームも内設されている。


『夕飯にはよびにくるから休んでなよ』

「ありがと」


イルミが出て行って広い部屋にポツンと一人になった。
寝ようと思いベットに寝転がるもあまりの広さに落ち着かない。
よく考えればこの世界に来てから、ソファで寝るかふーたんのベットで二人で寝るかのどちらかだった。
隣に誰もいないのは、寂しくて寒い。ふーたん自身は体温は高いほうではなかったけど俺よりは温かかったしなにより存在が温かかった。
怒ってるかな、寂しがってるかな、悲しんでるかな・・・泣いてる、かな。
ぎゅっとネックレスを握りしめた。


「ふーたん・・・っ」


こんなに辛いなら、嫌われてでも蜘蛛に残ればよかった?好きにならなければ、よかった?出会わなければよかった?
考えても考えても答えは出てこない。出てくるのは涙だけだ。

pipipipipi


「・・・ヒソカか」

≪もしもし≫

「もしもし、・・・服と傘、ありがと」

≪いいよそんなこと。それより、泣いてるのかい?≫

「別に・・・」

≪蜘蛛のメンバーは記憶が戻って沈みきってるよ≫

「じゃあ伝言、いいか?」

≪うん≫

「俺のこと探すな、お前らが忘れたころに一度会いに行く・・・って」

≪わかったよ。きっと誰も君のことわすれないだろうけどね≫

「そっか?・・・ヒソカ、また会おうよ。何かと世話になったし」

≪クックック・・・いいね、また今度♪≫

「おう、じゃあ・・・またな」


電話を切って適当にソファあたりに投げる。なんか、元気でたな。変態ピエロのおかげか。
涙を拭い上半身を起こした時、控えめに部屋のドアが開いて銀髪の男の子が姿を現した。


「・・・?」

『あ、あんたがカンナ?』

「そうだけど、お前は?」

『俺はキルア・・・イル兄とどんな関係なんだよ?』

「イル兄っつーことはイルミの弟?イルミと俺はただの知り合い」

『っそっか!!』


パアァッと顔を明るくするキルアに手招きすれば走って飛びついてくる。
イルミのこと嫌いなのか?


「わ・・・っ」

『俺、カンナさんのこと好きだ!』

「お、ありがと。さんなんかいらねぇよ?」

『じゃあ・・・カンナ姉!!』

「う〜ん、ま・・・いっか」


俺の膝に跨りぎゅうぎゅうと抱き着いてくるキルアの柔らかい銀髪を撫でてやれば嬉しそうに擦りよってくる。
神楽に似てる・・・今はもう成長しているであろう妹に。
それからいろんな話をした。好きな食べ物、嫌いな食べ物、俺の種族の話、キルアが受けた教育の話。


『その“夜兎”って、カンナ姉しかいないのか?』

「家族はいる。どこにいるかは、まだ内緒」

『内緒ってなんだよー、みんな殺人してる?』

「俺の妹はしてないよ、殺しは嫌だって」

『・・・その妹のことどう思う?』

「別に、どうとも思ってないかな・・・一族の生き方に誇りを持ってる俺とは全く違う考えだからアイツの考え、正直理解できないけど悪いとは思ってない」

『なんで?』

「アイツの人生はアイツが決めればいい。危なくなりゃ俺が助けてやればいいんだからってな」

『・・・俺、ほんとは殺し嫌なんだ』

「だから、イルミや家族が嫌い?」

『嫌いじゃ、ないけど』

「本当に嫌だったら話してみなよ、それでも無理だったら・・・俺にまた相談しな?」

『うん!!』

『カンナ、ご飯出来たみたいだよ・・・キル、ここにいたのか』

「イルミ」

『もう仲良くなったの?俺妬けちゃうなぁ』

「んな無表情で言われても」

『飯行こうぜカンナ姉!!』


俺の膝から降りたキルアは嬉しそうに俺の手を引いてドアに近づく。繋がれた手をじーっと見ているイルミの手を俺が引いて3人で夕飯を取る部屋に向かった。


「・・・匂い」


部屋に入った途端に料理の匂いに紛れて異物の匂いを感知した俺はどこかで匂ったことのある匂いだなと頭を捻る。
たしか今と一緒で料理に紛れてたような・・・あ、そうだ春雨で薬品物を開発していた師団の奴らだ。ってことは、毒?


「イルミ、なんで毒の匂いがすんの?」

『すげえ・・・カンナ姉、匂いでわかんのかよ!』

『すごいね嗅覚。この家の料理は全部毒入りだよ』

「ふ〜ん、教育上?」

『えぇそうなの』

「あ、キキョウさん」

『食べれるかしらぁ?』

「たぶん大丈夫だけど」


イルミとキルアに挟まれて席に座りイルミの弟と親父さんとおじいさんに簡単な自己紹介をすませ、食事に手を伸ばす。


「キキョウさん、俺の食欲半端じゃねーけど・・・大丈夫?」

『えぇ好きなだけ食べていいのよ!』


というありがたすぎる言葉に次々と料理を平らげて行く。
毒のせいか少し舌がピリピリするけど、どの料理も美味しかった。
パクの飯には負けるけどな。



 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ