蜘蛛の糸に絡まった兎ちゃん

□訪ねて来たのは、天使か悪魔か
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名前を呼ばれて大袈裟なほど肩が上がり体の震えが止まらない。


「は……っ」

『てめえ何者だ!!』


息が、上手く出来ない。
助けて…助けて助けて助けて。


「はっ…はあ…っ」

『カンナ?!』

『お前なぜカンナを知てるか』

『なぜ?だって俺ァ…




栞七の父親だからな』

『な…』

『父親…?!』

『カンナの世界の…』


みんなが思っていたことはただひとつだろう。
父親ならなぜこんなにも怯えているんだ。


『おい栞七、久々に会ったんだから顔ぐらい見せろよ』

「…っ」


震えて言うことを聞かない体を必死に動かして顔を上げると、忘れもしない…


「と……さん…」

『アイツに似て美人になったな。何年振りだ?』

「…6年振り、だよ」

『6年だと?いくらお前が宇宙に居たからって…』

『宇宙であの餓鬼と一緒に居たらしいな?』

「!!」

『あの後すぐ餓鬼と同じ髪色にしたらしいしなぁ栞七?』

「っ…なんで…」

『お前の近くに見張りをつけていたから知ってんだよ』


見張り?春雨に…?


『機会を伺ってたんだがあのくそ餓鬼お前にベッタリなもんでな…だから優秀な奴らに装置の開発をさせた』

「ま、さか…あれは…」

『あぁ、お前らにあの星を襲うように仕向けたのもお前をこの世界に飛ばしたのも俺だ』


嘘だろ?俺はまんまとコイツの思うつぼになったってのかよ。
目眩がしてその場にしゃがむとサッとマチが隣に来て肩を抱いてくれ、ふーたんとフィンが俺を隠すよう前に立つ。


「は、っはぁ…」

『しっかりしな』

『どういう事だオッサン』

『俺と栞七はある親子のせいで縁を切っちまったのさ。特に餓鬼のせいでな』

「かむ、いを…悪く言うな…!!」

『神威…って、カンナの兄貴じゃなかった?』

『あ?なんだ栞七言ってなかったのか?アイツと栞七は―――』

「うるさい!!」


ふらりと立ち上がり声を絞り出す。


『カンナ…?』

「お前の目当ては、俺だろ…!!コイツらに余計な事言う必要なんか微塵もないはずだ!!」

『くっくっ、そんな口の聞き方でいいのかァ?』

「っ……俺が、素直に行けば…いいんでしょ?」

『あぁ』

「行くから…っ、だからみんなに何も言わないで…」

『来い』

「…ごめんクロロ、俺行かなきゃ」

『それは、お前が望んでいることか?』

「…うん」


違う、望んでなんかいない。
これが嘘かどうかなんてきっとこの場にいる全員がわかってる。
でもお願いだから俺の嘘を指摘しないでくれ。


『わかった』

『団長?!』

『ちょっと待てよ団長、どう考えたって嘘に決まってんだろ?!』

『カンナは父親と行くと言った』

『だからそれが!!』

『俺はカンナの意見を尊重しただけだ』

『くっそ!おいカンナ!!』


クロロに何を言っても無駄だと思ったのか、フィンが俺の肩をつかんだ。


「な、に…?」

『あんだけ怯えてて、なんで行くんだ?!』

「怯えてない、ただ驚いただけ」

『…てめえ』

「フィン」

『あ?』

「眉毛ないしピーマン食べてくんねぇし意地悪だけどさ、俺…フィンのこと結構気に入ってる」

『は…?』



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