蜘蛛の糸に絡まった兎ちゃん

□大胆な兎ちゃん?!
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心臓が、一瞬止まった気がした。


『男にキスするの駄目ね』

「ふぇ…?」

『ワタシ以外の奴に抱き着くのも許さないよ』

「…?」

『わかたか?』

「う、ん」


どうしよう、酔いが回ってふーたんの言っている意味があまり理解出来ない。


『わかたなら今日はここで寝るといいよ』

「ん…ふーた、んは?」

『…内緒ね』

「むぅ…おやすみぃ」


ゆっくりと寝かされてにへっと笑う。


「ふーたん…好きぃ」

『っ…ととと寝るよ』


乱暴に、でも優しく頭を撫でられて眠りに落ちる寸前―――


『ワタシも好きね』


ふーたんの声が聞こえた気がした。





翌日、俺は頭が割れるほどの頭痛に目が覚めた。
最悪の寝起き。


「いってー…ん?あぁそういえばふーたんのベッド…は?!」


な、ななななななんで?!
なんでなんでなんでなんでなんでなんで?!


『すー…』


なんでふーたんが隣で寝てんだ?!
あわあわとベッドの上でパニックになっていると目を覚ましたふーたんと目が合う。


『…朝から騒がしいね…』

「ふ、ふーたん」

『…なんね』

「あの後からずっと隣で寝てた…?」

『それがどうしたか』

「〜〜〜〜っ」


恥ずかしい……!!
かあっと赤くなる顔を隠すためにふーたんから布団を奪い潜った。


『なにするね、まだ肌寒いよ』

「…」

『…』


バサッ


「わ!ちょ、返せよ!!」

『なぜそんな顔赤いか』

「あ、赤くないっ!」

『耳まで赤いね』


布団を奪われて、耳に触れられて体が固まる。
なんだよコレ…俺こんなキャラじゃねーだろ!


『昨日みたいに』

「へ…?」

『甘えるお前も悪くないね』

「う、うっさいな!」

『ぎゅー、してやてもいいよ』


ニヤリと意地悪く笑うふーたんに心臓はバクバク。


「っふーたんキャラ変わってんぞ!」

『変わてないね。お前、大人しくされてればいいよ』

「ひゃっ」


ベッドから逃げようと背を向けた瞬間、後ろから腕が伸びてきて抱き寄せられた。

ドクンッドクンッ
おかしい…こんな俺も、こんなふーたんも。
からかわれてるだけ、期待なんかしちゃ駄目だ。
もし万が一、億が一、そうだとしても俺は応えちゃいけない。
この気持ちを誰にも知られちゃいけない。
もうこの感情は殺す。


「…ふーたん」


だから―――


『?』

「もうちょっとこのままでいて…?」


今だけは許して?


『…仕方ないね』


耳元でふーたんの声が聞こえてぎゅっと強く抱き締めてくれる。
あぁ、駄目だ…泣きそう。








闇が彼女を再び飲み込むまで…





あと1ヶ月。




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