蜘蛛の糸に絡まった兎ちゃん
□蜘蛛くんの命令と兎ちゃんの闇
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『髪に血ついてるね、せかく綺麗なのに』
「へ…?」
『お前の髪嫌いじゃ、ないね』
髪を撫でられてドキリとする。
『傘で怒たか?』
「うん」
『…きと見つかるね』
「っうん」
『なぜそんなボロボロか』
「目の前に爆弾落とされて」
『やぱりノロマよ』
そっと頬を撫でられて微かに痛みが走り、切れていることに気がつく。
『返り血を浴びたお前は嫌いね』
「…うん」
『でも、お前の血は…嫌いじゃないよ』
「どういう―――」
意味?と聞こうと顔を上げればふーたんの顔が目の前にあって…また、舐められた。
今回は首じゃなくて頬だけど、傷口を舐められている。
「ん…痛っ」
ちゅっと軽いリップ音を残してふーたんは顔を離し、再び強く抱き締められる。
頭からシャワーを浴びて、服もびしょびしょで身体に張り付いている男女が抱き合う。
いくら恋愛感情を知らないカンナもそんな状況で心臓が暴れないわけもなく…
顔を真っ赤にして心臓を押さえふーたんの肩に顔を埋める。
「ふ、ふーたん…パクの所行かないと…」
『…すかり忘れてたよ』
それから、タオルで髪を拭いて着替えて…二人でパクの所に行くとクロロ、マチ、シャル、フィン、うぼーも居た。
『ほら、傘あったよ』
「あ!シャル、フィンありがと!!」
『いいってことよ』
『また頭から被ったって?』
「あははー…マチ怒んないで」
『ほら、カンナあなたの好物よ』
そう言って差し出されたのは大きな箱。
『なんだなんだ?』
『はやく開けてみろよ』
うぼーに急かされ箱を開けるとそこにはでっかいチョコケーキがあった。
「パク!これどうしたんだ?」
『作ったのよ』
「すご!!ありがと!!こんな優しい人みたことねぇ」
『大げさね…』
「だって、すぐ殴るし食べ物奪ってくる馬鹿とおつかいもロクに出来ないオッサンしかいねーもん」
『…会ってみてーよ、そいつらに』
その後、一人でチョコケーキを平らげそれぞれの部屋に戻って行った。
さっき浴室で抱きしめられて、頬舐められて、心臓破裂しそうなぐらいドキドキして…
ふーたんと同じ部屋にいるのも落ち着かなくなった俺はフィンの部屋に押し掛けていた。
『ったく…人が寝ようとしてんのによ』
「んじゃここ泊めてよ」
『んなことしたら俺が殺されるっつーの』
「知らねーよ」
『知れよ!…で?なんだよ』
「ふーたんの部屋落ち着かないんだって」
『喧嘩でもしたのか?』
「ううん、なんか…心臓破裂しそうだし、顔真っ赤になるし」
『…』
「なんなんだよこれ…」
『お前さ、恋愛したことあるか?』
「は?フィンの口から恋愛とかきめぇ」
『ぁあ?追い出すぞ』
「ごめんごめん!で、恋愛?ないけど、それがなんだよ」
『ほー…』
「??」
『お前、団員の中でフェイタンといる時が一番楽しそうなの知ってるか?』
「へ?そうなのか?」
『よく笑ってるしな』
「ふーん…って、それがなんか関係あるのかよ」
『…驚くほど鈍いなお前』
「は?恋愛だのふーたんといる時が一番いいだの…それじゃあまるで俺が…」
そこまで言って気づく。
まるで、俺が…おれ、が…
「ふーたん、を…好き…?」
『なんじゃねーの?』
「なっななななななな」
『慌てすぎだろ…』
「ばっ、馬鹿じゃねーの?!俺、人殺しだし!!」
『俺たちもだが』
「海賊だし!!」
『盗賊だぜ』
「俺は!!!」
『??』
「俺はそんな…っごめんフィン、俺今日は屋上で寝るわ」
『寝るったってお前、日にあたると死ぬんだろ?』
「包帯巻けば大丈夫なんだよ、じゃな」
納得のいかないようなフィンの部屋を出て屋上に出る。
さっき俺はフィンに何を言おうとしてたんだ。
あれは、他人に言ってどうこうなるものじゃないって…分かってるのに。
「俺は…人に想いを寄せていい奴じゃないんだ」
月に向かってポツリと零れた言葉は誰にも拾われることななく消えて行く。
「…神威助けてくれよ…あの時みたいに、来てよ…」
「ん…朝…?」
眩しくて目を覚ますと見知った背中が視界に入る。
「え、ふーたん?」
『やと起きたか』
「何してんの?!」
『それワタシの台詞ね。ワタシ来なかたらお前死んでたよ』
怒ったようなその言葉に俺が日に弱いこと覚えてくれたんだ…と嬉しくなる。
しかも俺の番傘とふーたんの傘で影を作ってくれている。
包帯を巻いてるから大丈夫だったけど、心配して来てくれたことに思わずにやける。
「…ありがと」
『許さないね』
「許してよふーたーん」
『嫌ね』
「ケチー」
昨日フィンに言われた通り俺はふーたんが好きみたいだ。
俺にそんな権利ないけど…隣で笑うぐらい、いいよな?
。