自由気儘な猫
□お仕事しよう
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早速秘書にFAXで送りたいと言い出した親父に押し付けられ、あまり使う機会のないFAX機を引っ張りだして送る。
親父曰く、秘書は真面目過ぎる堅物らしい。
まぁ、こんなおちゃらけた社長を見るんだから堅物で丁度いいと思うんだけど。
親父としては面白くないとか。
「大人しく仕事してやりなよ」
『してるさ。アイツは息抜きを知らねぇんだ』
『叔父様はその方を見習うべきですね』
『……おいおい、ここに俺の味方はいねーのか?』
わざとらしく溜息をついた親父の携帯がけたたましく鳴り響き、電話に出る為に部屋を出た。
あたしは残りのココアを飲み干してパソコンに向かい直す。
なんだかんだパソコンを弄るのは久し振りで、楽しい。
『聖ちゃん、何してるの?』
「親父の会社調べてんの。なんの仕事かも知らなかったしな」
『へぇ…すごいねぇ』
って、なんかめちゃくちゃ大手企業だね親父。
ぐっと伸びをした時、不意に誰かに頭を撫でられて振り返る。
「かすが?」
『もう止めはしないが、あまり危ない事はしないでくれ…』
「ん」
『聖ー!!』
ニコニコと笑いあっている幸せな時間を、親父が打ち破る。
携帯片手に部屋に戻ってきた親父はあたしに携帯を渡して話してやってくれと言った。
(二重かっこ内は英語です)
「《もしもし》」
『《あぁ、貴女が聖さんですか?!》』
「《うん》」
『《セキュリティ素晴らしかったです!!》』
「《ありがとう。色々変えちゃったから分からないところがあったら言ってください。親父から連絡先聞いてもらっていいんで》」
『《わかりました。それから、一つ頼みたい事があるんですがよろしいですか?》』
「《はい?》」
『《私どもの会社に入社していただけませんか?》』
「《……は?》」
『《入社と言っても聖さんにはセキュリティの管理をしてもらうだけでいいんです。別に日本にいても問題ありません》』
「《…少し待ってもらえますか?》」
『《はい》』
「親父ー、会社の管理してくれって言われたんだけど」
『はあ?……あー、まぁあいつが言うなら』
「ふーん。じゃあしようかな。《もしもし、あたしで良ければさせていただきます》」
『《本当ですか!!ありがとうございます!後日書類をFAXで送らせていただきますのでよろしくお願いします》』
「《はい、お願いします》」
丁寧な話し方に真面目な秘書だって事がわかる。
受話器の向こうで頭下げてそう。
プツリと通話を切って超展開だな…と思いながら親父に携帯を返すとかすがが驚いた顔であたしを見ていた。
ああ、そういえばかすがも英語わかるんだっけ。
『お、お前…』
「大丈夫、そんな危ない事じゃないって」
『そうそう、かすがちゃん。俺がいるから安心してくれ』
『…そうですね、その点に関しては信用しています』