自由気儘な猫
□待ちに待った日
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親父を外に追い出して席に座る。
くそう、親父のせいで空気悪いじゃんか。
「こじゅ、ごめん続けて」
『お、おぉ……明日の日直は―――』
固まっていた生徒たちもハッとしたようにこじゅの話を真剣に聞き、なんとか変な空気を抜け出せた。
「……はぁ」
『大丈夫か?背中』
「あーうん、大丈夫」
『親父さん……認めてくれたな』
「……うん」
そうだよな、あたし認められたんだよな…。
そこらの女に負けないぐらい強くなったんだ。
じわじわと実感が湧いてきて少し泣きそうになる。
『なんかよ…俺も嬉しいわ』
「ん…」
ポンポンと頭を撫でられて満面の笑みを返す。
それから親父の言っていた頼み事について軽く考えているとHRが終わり生徒が教室を後にしていく。
『聖!!あれがお前の親父か?!』
『親子で殴り合いなんてなにしてるの!』
『拳で語り合ったのでござるな!!某感動致した!!』
「……語り…??」
伊達ちゃんは信じられないと言いたげに、さっちゃんは怒りながら、ユキは興奮気味に迫ってきて……なんていうか、うん、ウザい。
「あーもう!そんなに気になるならあたしん家来る?」
『っ行く行く行く!!』
『Really?!』
『行きたいでござる!』
『……聖』
「こじゅ!」
『よかったな』
「うん、もう女には負けないよ」
『ふっ…そうだな。ほら早く親父さん所行って来い』
こじゅに軽く背中を押されてそのまま廊下に早足で行く。
「おや……じ……?」
『叔父様!聞いてますか?!』
『あ、あぁ……』
「かすが?」
どうせ女子生徒にでも愛想振り撒いてんだろうと廊下に出れば、かすがに怒られて肩を落としている我が親父。
溜め息に溢して二人を見ると改めて思うのが髪の色だ。
かすがは綺麗な金髪で、親父は色素の薄い茶髪。
母さんは金髪だったからあたしのこの髪は母さん譲りなわけ。
それにしても親父はたしか35歳のはずだけど、若々しすぎだろ。
親父の容姿は俗に言うイケメンで、20代後半にしか見えない。
「かすが、続きは家でして?今からアイツらも来るし、かすがも来なよ」
『……そうだな。ここでは目立ってしまう』
『聖!!男を家に入れるつもりか?!』
「はあ?泊まった奴もいるけど」
『っな!!誰だゴラぁ!!俺の聖に―――』
「やめろ恥ずかしい」
意味のわからないところでキレだした親父の腕を引き足早に廊下を歩くと好奇心やらなんやらの視線が痛い。
「…なに見てんだ」
『ひっ……』
『おーおー、我が娘ながら怖いな』
「黙れ馬鹿」
『……パパに向かって黙れ馬鹿はなくねぇか?パパ傷ついちゃう』
親父ってこんなにキモかったっけ?
冷ややかな視線で見つめれば楽し気に喉の奥で笑い出す親父に本気で引いた。
靴を履き替えて校門に出てる。
忘れてた、コイツ金持ちだった。
黒のリムジンに平気で乗り込む親父に溜め息を溢すと後ろから来たみんなが歓喜の声をもらす。
『お前らはやく乗れ』
渋々乗り込むと途端に始まるかすがから親父への説教。
(叔父様!!)
(……勘弁してくれ…)