自由気儘な猫

□れっつぱーりー
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『聖!!』

「ん?あ……チカ」


靴箱から慌てて駆け寄ってくるチカに口元を吊り上げると途端に顔をしかめられた。


『っお前……』

「あたし帰ろっかな」

『喧嘩しに行くのか』

「とりあえず煙草と酒で頑張る」


中途半端な喧嘩のせいで昂った体は強い相手と喧嘩をする事でしか鎮められない。
でもこの町にそんなに強い奴はいないから、違う方法でを見つけないとなー。


『……屋上行こうぜ』

「でも」

『おらよ』


グイッと肩に担がれて強制的に連れて行かれる。


「チカ!!」


中学の頃チカと一緒に喧嘩を買い、物足りないと感じる度に本能的にチカに殴りかかっていた。
怪我をさせた事だって何度もある。


『んな心配すんなって』

「離せ馬鹿!!」


チカに怪我をさせるのなんか二度と御免だ。
チカと喧嘩をするのなんか二度と御免だ。
昂る感情を抑えようと右手の甲に歯をたてる。


『ったく、噛むなよ。ほら煙草』

「ゔー……」


屋上についたのか地面に下ろされて煙草を渡された。


『あー、血出てんじゃねぇか』

「…っチ、カ?」


ドカリと胡座をかいたチカに右手を掴まれたと思えば少し血の滲む甲にキスを落とされる。
ざらつく舌に血を舐めとられて体に痺れが走った。
血を舐めるチカを見ているとゾクゾクして思わず視線を逸らす。


「っ……」

『ほら、座れよ』

「…なんでチカの膝?」


そのまま右手を引かれてチカの胡坐の上に座るはめになった。
別に凭れれるから良いんだけどさ。


『気にすんなって』

「ばーか」

『っんだと?!』

「火、ちょーだい」

『…ほらよ』









きーんこーんかーんこーん



煙草を吸ったり、チカとじゃれたり、日向ぼっこをしたり…あっという間に午前中の授業終了を知らせるチャイムが鳴った。
昂った気持ちもおさまったし、とりあえず安心。


『アイツらも待ってるだろうし、戻るか』

「あー…かすがに怒られる…」

『片倉先生もだぜ』

「え、まじか」


最悪…なんて思ってるわりには呑気に階段を降りて行くと前の方に女が数人いるのが見える。


「あ、この前の女」

『っ!!す、すみませんでした!!』

『……なんだぁ?』

「あたしに水かけて翡翠の奴らにチクった奴ら」


声を掛ければ酷く怯えながら謝って、走り去って行った。
まぁ翡翠に勝った女は怖いだろうな。


『馬鹿な女どもだな』

「うんうん」

『聖ーーー!!』

『佐々木ーーー!!』

「げ」





(女が窓から――)
(ごめんってば)
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