二度目の人生

□もやもやします
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『行くぞ』

『ちょっ……かすが?!』


目的地はやっぱり甲斐で、町娘に扮したかすがは躊躇なく甘味処に入っていった。
すかさず着流しに着替えて後を追う。


『で、なにがあったんだ』

『別にたいしたことじゃ―――』

『なにがあった?』


なんか怖くない?
え?かすがってこんなに俺様と話してくれる人だったっけ。
……いや、感情ありまくりのかすがに聞くのがいいのかもしれないしな。


『桜姫の生まれ変わり、ってもう知ってる?』

『あぁ。そういえばお前の所か』

『そうなんだよなぁでわその桜姫がめちゃくちゃ可愛いくて、舞桜衆が羨ましいなとか……』

『……』

『もやもやするわけ。なんなのこれ』

『……』

『……かすがー?』


黙ってしまったかすがの方に視線をやると石のように固まってるかすががいた。


『お、お前……それは』

『え……なに』

『桜姫を見ると心臓が高鳴るか?』

『あーうん』

『桜姫が舞桜衆の男と仲良くしているのが気に食わないのか?』

『……気に食わない?うん多分』

『それは、恋だろう』

『はあ?!』


恋?!そんなのかすがじゃないんだし……


『違うと言い切れるのか?』

『……俺様忍だし』

『わたしも忍だが』

『そりゃかすがは……』

『なんだ』


いつになく真剣な目に言葉を失う。
俺様が、恋?忍の俺様が?
感情を捨てた忍が、主の姉上に恋心を抱いた?


『ない』

『貴様……』

『桜姫は真田の旦那の姉なんだぜ。そんなことあっていい訳ないだろ』

『ならその気持ちをどうするんだ』

『消すさ。今までだって消してきたんだ』


気付きたくなかった。
いや、認めたくなかっただけかもしれない。


『ま、かすがが気にする事じゃないだろ』


いつも通りへらりと笑い団子を口に含む。
なんの感情かがわかっただけで胸のもやもやが消えたし、感情を消すことが出来る。
とりあえず今日から少し桜姫と距離を置こうかななんて考えていると前方から原因の彼女の声が聞こえた。


「おーい、猿と…び……?」

『桜姫?!』

「……あーなんもねぇ、またな」


忍かと間違うほどの速さで消えた桜姫に俺様とかすがは唖然とする。
なんで、なんでそんな悲しそうな顔をしたのさ。



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