二度目の人生
□ただいま
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ベリッと野郎共を剥がせば翔が私の目の前に立ち、片膝をつく。
『柚稀様、おかえりなさい』
「っ」
翔にならって野郎共も片膝をつき
『おかえりなさい!!』
満面の笑みで叫んだ。
「…っただいま!!」
『姐さぁぁぁん!』
『大好きだぁぁぁ!!』
男ばかりのむさ苦しい舞桜衆に凛と強く咲く一輪の華、なーんて言われてたっけ。
ギャーギャーと騒いでいた野郎共を静めたのは信さんだった。
『柚稀』
「信さん、どうしたんです?」
『再び舞桜衆の頭領となり武田と共に戦う気はないか?』
「……んー、信さんのところで戦えるなら何も異議はないけど」
『なにか不満でもあるのか?』
「私がもう一回頭領ってのは、ね。今の舞桜衆は翔を頭として成り立ってる訳だし」
『柚稀様、俺は頭領なんて譲り受けた覚えはありませんよ』
「はあ?!」
『あくまで俺は副頭領として舞桜衆を守ってきただけです』
確かに、舞桜衆を頼むとは言ったけど頭領を託すような言葉は一切言わなかった。
だからって普通は舞桜衆を頼まれた=頭領を託されただろ?!
「……っとにお前捻くれてんな」
『なんとでも言ってくださいよ、俺らの頭領は柚稀様ただ一人』
『決まりじゃな、柚稀……いや、舞桜衆頭領殿。我らと共に戦おうではないか』
「…………わかりましたよ。翔!」
溜め息をついて隣に立つ翔に手を出し小刀を受け取ると腰まである茶色の髪に刃を入れた。
『なにを……』
驚く猿飛に不敵な笑みを浮かべてザクザクと髪を切り落とす。
舞桜衆を結成した時も私はこうして野郎共の目の前で髪を切り、女を捨てた。
“私”から“俺”へと。
肩につかない程に短くなった髪を揺らしてさっき野郎共がしたように方膝をつく。
「舞桜衆が頭領、柚稀。今この瞬間から信玄公と共にこの乱世を駆け抜けることを誓いましょう」
『うむ』
「翔、俺の刀と服残ってるか?」
『勿論です』
こうなることを予想していたのか、サッと俺の双剣と服を差し出す翔に軽く笑う。
近くの部屋を借りて着替えをすました。
今思えば結構現代に近い服着てたんだな。
「よっし、桜姫復活ーってね」
『ふむ。やはり似合っておるのぅ。ならば幸村のところへ行ってくるがよい』
「げ……」
『お供しますよ、柚稀様』
(コイツらにただいまと言えることが)
(こんなに幸せだとは)