やんちゃひめとちしょうさま
□あかとあおと、ふうらいぼう
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『洗濯に掃除に料理…』
「もう二度とつまみ食いしません!」
『…とりあえず今日も少し手伝って頂きます』
「え、やだやだやだっ」
*
『姫様、これを貴女様の部屋へ。それで最後にございます』
「……はーい」
あれから少し皆さんと話をしてからお菊の手伝いに励んでいる。
赤い人は真田幸村。
色の通り、凄く情に厚いと言うか熱血な人。
青い人は伊達政宗。
南蛮語を巧みに使い、幸村とは好敵手らしい。
長髪の人は前田慶次。
お祭り好きで、人の恋を応援するのが好きみたい。
片倉小十郎さんは、見た目こそ怖いがとても優しい人だ。
政宗の部下なんだって。
迷彩の人は猿飛佐助さん。
優秀な忍らしく、幸村の部下…というかお母さん?
「うぅ…小十郎さんの野菜が美味しそうだったんだもん〜…」
溜め息をはきながら、洗濯し終わった布団と寝間着を抱えながら廊下を歩く。
部屋の襖は開けっ放しですんなり入れた。
「うに゙ゃ!!」
……はずだった。
『椎那!』
『だ、大丈夫?!』
「いったぁ〜…」
我ながらどんくさいと思う。
入口の少しの窪みに足を引っかけて思い切り倒れたのだから。
『あらら、洗濯物ぶちまけちゃったね』
「ありゃ…ごめんなさい」
ぶつけた額を押さえながら顔を上げると佐助さんの言う通り見事に散らかっている洗濯物。
『俺様も手伝うよ椎那ちゃん』
『俺も手伝おう』
「わ、ありがとうございます」
佐助さんと小十郎さんに手伝ってもらってなんとか片付けが終わった。
この洗濯物でお菊の手伝いは終わりだったから二人にお礼を言って元就様の隣に座る。
『貴様らはこやつを見るために来たと言うのか』
『う〜ん、そうなるねぇ。俺たちは元親に“面白いものが見れる”って言われただけだし』
「面白いもの??」
『確かに椎那にたいする毛利の態度は見物だな』
『うむ、とてもお優しい目をしておられる!』
『チッ……姫若子の奴め』
「元就様は優しいですよ!!」
少しは分かってくれたかな、元就様にもこんな一面があることを。
冷徹で非道なだけじゃないんだってことを。
『黙らぬか馬鹿者』
『っ毛利殿!先程から椎那殿に幾度も“馬鹿者”と…なぜそのようなことを申されるのですか!!』
「……幸村?」
『馬鹿に馬鹿と言って何が悪いのだ』
『ですから!』
「幸村いいんだよ」
『しかし……』
「元就様の妻は、馬鹿者にしか務まらないらしいから」
『は……?』
「だから、誉め言葉まではいかなくても妻として認められてるって事なのよ」
『……』
『いいねぇ、恋してるねぇ』
みんながぽかんと呆気にとられている中で慶次はニコニコと笑いながらお茶を啜っている。
『…だからお前は馬鹿だと言っておるのだ』
「えへへ」
ふにゃりと笑えば腕を掴まれて苦しいぐらいに抱き締められた。
人がいるのにこんな行動をする元就様は初めてでオロオロと狼狽える。
「も、元就様っ?!」
『馬鹿で危なっかしい我のモノよ』
『はっ破廉恥でござ……むぐっ!!』
『はいはい、旦那少し黙っててねー』
『見てるこっちが恥ずかしいぜ』
『全くですな』
『いい華咲かせてるねぇー』
(貴様ら用が済んだなら去れ)(我とこやつは忙しい)
(元就様っ?!)