やんちゃひめとちしょうさま

□やさしいおにさん
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我から離れて頭を下げる椎那に長曾我部はなんとも間抜けな顔をする。


『椎那二度とこのような真似はするでないぞ』

「……元就様が無事ならしません」

『何を…』

「生憎、大人しい性格ではないので」

『……馬鹿者が』

「はい馬鹿です。元就様の妻だもの」






















(椎那side)


元就様が無事だった。
怒られたけど、無事ならそれでいい。
死んでしまえば怒られる事も出来なくなるんだから。


「元就様もうすぐ兵が来ますから、帰りましょう?」

『……』

『毛利に妻ねぇ…気難しい旦那で疲れねぇのか?』

「元就様は優しいお方なので」


まじまじと私を見定めるように見る長曾我部さんに微笑めば目を丸くして大笑いされた。


『くっくっく!毛利よぉ、良い嫁さんじゃねぇか』

『ふん、ただの馬鹿者よ』

「だから、馬鹿馬鹿言い過ぎですってば!」


ぷーっと頬を膨らませればむにっと掴まれる。


『フン、不細工な顔よ』

「なっ…こうすれば元就様だって不細工!!」

『は、離さぬか!』


仕返しに頬をむにっと掴めば怒られたけど、それはお互いさま。
怒っているけど、頬を摘まれた元就様の顔は不細工どころか可愛いもんだから少し腹が立つ。


『ぶわっはっは!!毛利にこんなことする女がいるとはなぁ!!』

『…こやつだけよ』


手を離してそっぽを向く元就様と楽しそうに笑う長曾我部さんを見てふと、疑問が浮かぶ。


「なんでお二人は戦うんですか?」

『?』

「こうやって笑って話をしている二人がなんで争うんですか?すごく……悲しい、です」


あぁ、泣くつもりなんかなかったのに。
涙が一筋頬を濡らす。
途端に二人ともあわあわと慌てて私の側に座った。


『な、何故泣くのだ』

「泣いでまぜん」

『落ち着け、なっ?!』

「じゃあ、やめてくだ、さい…っ」

『……』

「元就様が、怪我をするのは……嫌です」


嫌なのだ。
以前、元就様が傷を負って来たときは心臓が止まるかと思ったほど。


『あんた…』

「いや…です……っ」

『よし、毛利』

『……なんぞ』

『ここは椎那に免じて一時休戦としようじゃねぇか』

『フン、言われずともそのつもりよ』

「っ本当ですか?!」

『おう。よかったな、毛利が怪我する可能性が減ったぜ』

「はい!!長曾我部さんありがとうございますっ」

『堅苦しいのは無しにしようや、元親でいい』

「元親…ですね!」


ぐしぐしと涙を拭い再び元就様にしがみつくように抱き着く。






(鬼は)(とても良い人でした)
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