やんちゃひめとちしょうさま

□たいようとつき
2ページ/2ページ


きちんと毛利様に向き直り、笑顔で深々と頭を下げる。


『……あぁ』

「では、失礼致します。お仕事あまり無理のなさらぬよう」


気持ち悪い程の敬語がすらすらと口から出ていく。
立ち上がり襖に手を掛けたところで、ふと、呼び止められた。


「毛利様……?」

『その呼び方、変えよ』

「えと…もと、なり様?」

『それでよい。それから』

「はい」

『その取って付けたような敬語止めぬか』

「……バレてました?私あまり敬語に慣れてないので」

『バレバレぞ馬鹿者め』

「でも、元就様は御身分が…」

『我が良いと言っておるのだ』

「敬語ゼロですか?」

『多少は良い』

「はーい」


智将だか冷酷だか冷徹だか知らないけど、私はこの人が怖くない。
家臣たちは怖がっているように見えたけど、それはこの人を知らないからだと思う。
だって、私を叩き起こさなかったもん。
それだけで十分だ。


「毛利さ……元就様は日輪が好きなんですか?」

『我は日輪の申し子ぞ』

「ふふ、そうですか」


さっきから縁側で天を仰いでいる元就様はどこか嬉しそうで思わず頬が緩む。


『貴様は…月輪が好きか』

「はい!でも、空が大好きだから日輪も月輪もどっちも好きですね」

『ほう…日輪の美しさが分かるのか』


嗚呼、私…日輪を羨ましいと思った。
貴方様にそんな顔をさせる日輪を。
初対面で結婚を決めて、妻になって三日……
私は智将、毛利元就に心を奪われてしまったようだ。

願わくば、いつか同じ部屋で過ごせるような夫婦にならんことを。
なーんてね。


「さて、私はこれで失礼します。早く帰らなくちゃまた怒らちゃう」

『……あぁ』


貴方様が太陽ならば、私はきっと月。
太陽と月は決して交わることはないけれど、全く関わりがないわけじゃないでしょ?
だって月は太陽が無ければ輝けない。







(私はもう)
(貴方無しじゃ輝けない)
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ