やんちゃひめとちしょうさま
□おもいがつうじたひ
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「元就様ぁ……」
『……何ぞ』
「大好き、です」
『フッ…知っておるわ馬鹿者…』
微かに笑った声が聞こえて慌てて顔を見るとあの冷たい顔からは想像がつかないほど、優しい表情をしている元就様がいた。
馬鹿者と言われても悲しくならないのは、きっとその言葉に棘がないから。
「どうせ馬鹿ですよーだ」
『我の妻はとんでもない馬鹿者でなければ務まらぬ』
「なら、馬鹿で結構です。私はもう貴方様のお側でなければ生きて行けませんから」
『それでよい』
夫婦になって一週間、ようやく思いが通じました。
私と元就様は手を繋いで海辺を後にし、びしょ濡れのまま城に帰ると案の定城内は慌ただしくなる。
『姫様!!』
『元就様!!』
『我はよい、先にこの馬鹿をどうにかしろ』
『は、はい!』
「……元就様、いくらなんでも馬鹿馬鹿言い過ぎです」
『馬鹿に馬鹿と申して何が悪い』
「なら元就様はオクラですね」
『……』
『ひ、姫様?!』
「ふふっ、そんなに拗ねないで下さい」
海辺から城までの数分で私は元就様が怒っているのか、拗ねているのか、困っているのか……いつもの無表情でも分かるようになっていた。
『…拗ねてなどおらぬわ』
「そうですか?」
『………馬鹿は、困る』
「馬鹿を侮ってはなりませんよ」
クスクスと笑っていると元就様の顔がグッと近付き耳元でとんでもないことを囁いて離れていった。
『今日から椎那を我の部屋で過ごすようにせよ』
『はっ!!』
「も、元就様っ」
『……先程の言葉、本心ぞ』
「〜〜〜っ//」
不敵な笑みを見せてその場を去った元就様に私はへなへなと座り込む。
「も…心臓もたない…っ」
『姫様?如何なさいましたっ?』
「な、にもないわ……」
『では此方に。お召し物を…そのままでは風邪になってしまいまする』
――今夜が楽しみぞ――
――覚悟しておるがよいわ――
『姫様、ようやく夫婦になられましたね』
「……うん!」
翌日、腰が痛くて立てなかったとか。
(幸せだけど)
(痛いっ!)