蜘蛛の糸に絡まった兎ちゃん

□兎ちゃんの決断と別れ
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期限当日。


『カンナ』

「ん・・・あといちじかん〜」

『駄目よ、ささと起きるね』

「ケチ、鬼畜」

『なんか言たか?』

「嘘嘘・・・ふーたんおはよ」


にへっと隣に寝転んでいるふーたんに笑いかける。
俺は初めて身体を重ねたあの日からソファじゃなくベッドでふーたんと一緒に寝ているのだ。
えぇ、おかげで襲われまくりですけどね!
今日も腰痛いですよ!!


「服着るからあっち向いてて」

『チッ・・・』

「ちょ、舌打ちする?」


痛む腰を庇うようにゆっくりした動作で着物を羽織って帯を巻いて完成。
同じく服を着たふーたんと一緒に広間に行くとまだ会った事のない1人を除いて蜘蛛の面子が揃っていた。
みんなどこか緊張した様子で。


「おはよ」

『おはよう』

「なんで俺より緊張してんだよ」

『だって・・・そりゃそうでしょ』

『お前は呑気すぎんだよ』

「そうか?よし、シャル・・・スピーカーおっけい?」

『大丈夫だよ』


真剣な顔で頷くシャルにニコリと笑って神威に電話をかけると数コールの後聞こえた声は俺同様緊張感のない声。


≪もしもしー≫

「もしもしカンナだけど」

≪あぁ君か≫

「おはよ」

≪おはよう、で?≫

「ははっ!いきなり本題?」

≪前ふりなんかいらないだろ?≫

「まぁな。神威、俺さ・・・」


言葉を止めて後ろを見れば不安気な奴、緊張した奴、ポーカーフェイスの奴、俯いてる奴・・・


「俺、ここに残るよ」

『『『!!』』』

≪・・・まぁ分かってたけどね。実際言葉にして言われると結構辛いや≫

「神威ありがと」


ごめんなんて言わない。
言われたくないだろうし、俺はこの答えが間違ってなんかいないと思ってるから。


≪ほんと、栞七には世話かけさせられたよ≫

「俺もかけさせられたけどな。親父と神楽にも言っといてくんない?」

≪会えたらね≫

「うん。お前ら家族のおかげで今笑ってられるんだ。感謝してる・・・あ、阿伏兎と話せる?」

≪しょうがないから呼んできてあげるよ≫

「さんきゅ」


パタパタと神威が携帯を置いて部屋を出ていく音が聞こえる。


『お前・・・』

「なに、フィン。帰って欲しかった?」

『馬鹿か、んな事思うわけないだろ』

「そーいう事だから・・・これからもよろしくな?」

『『カンナ!!』』


ぎゅうううう

マチを筆頭にクロロとふーたんとボノとフラン以外が抱き着いてきて押し潰されそうになる。
うぼーなんてすごい力だもんな。


「痛い痛い痛い!!」

≪おう栞七か?・・・なんか騒がしいけど≫

「あ、阿伏兎?ちょっとみんな離れろォォォ!!」

『す、すまねぇ』

≪そっちに残るんだってな?≫

「ん、一緒に生きたい奴らがいるからさ」

≪そうか、寂しくなるが元気でやれよ≫

「阿伏兎こそ、神威のフォロー頑張ってな?」

≪あー・・・頑張るわ≫

「ま、食費も浮くし春雨にとっちゃ嬉しいんじゃないの」

≪そういやそっちで食いもんは―――≫

「食い逃げか食料盗んでる」

≪・・・だろうな。そろそろ上に呼ばれてっから団長に変わるぜ≫

「お、いってらー。阿伏兎元気で」

≪あぁ、おめーさんもな。≫

≪・・・栞七≫

「神威?」

≪後悔だけは絶対にするなよ≫

「わかってる、しねーよ」

≪神楽が知れば栞七に電話して駄々こねるかもね≫

「・・・それはちょっとキツいな」

≪まぁアイツも成長しただろうけど≫

「神楽に泣かれたら俺生きた心地がしない・・・」

≪・・・俺も苦手だよ。あ、これスピーカー繋いでるよね?≫

「?うん」

≪じゃあ、馬鹿な妹の事よろしく頼むよ≫

『あぁ任せろ!!』

『心配いらないね』

≪ほんとは見に行きたいんだけど最近忙しいくてさ≫

「・・・ばーか、シスコン」

≪今まで俺が大事に守ってきた妹だからね≫

「うん、知ってた。俺に近づいた男、次の日には居なかったもんな」

『こわ!!』

≪フェイタン、そんな俺の妹をもらうんだ。泣かせたら殺しちゃうぞ♪≫

『任せるね』

≪さて、阿伏兎も帰って来る頃だし仕事もあるし・・・そろそろ行くよ≫

「・・・うん」


後悔はしないけど、やっぱり悲しい・・・寂しい。
こんな気持ち初めてだ。


≪そんな涙声出されたら切りづらいじゃないか≫

「ごめ・・・っ」

≪栞七、元気でね。寂しくなればいつでも電話して来たらいいだろ?≫

「う・・・んっ」


優しい声色に我慢していた涙がボロボロと溢れて上手く声が出ない。


「かむ、い・・・」

≪ん?≫

「大好き・・・っ!!」

≪フッ・・・俺もだよ。じゃあね≫

「・・・ん、ばいばい・・・」



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