蜘蛛の糸に絡まった兎ちゃん

□蜘蛛くんの命令と兎ちゃんの闇
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「へ?仕事?俺も?何で?盗み?何を?どこで?」

『……(イラッ』


ドゴッ


「いった!」

『質問多いね。一つにしろ』

「え?一つ…えーと、どんな仕事を俺にしろって?」

『チ…美術館に宝石取りに行くね。お前はその囮役よ』

「なんで舌打ち…ってか囮とかいるの?正面から行けばいいじゃん」

『ごちゃごちゃ言わずにととと来るね』


殴って手を引いて、ってなんて強引な。
あ、また手繋いでる…って何考えてんだ俺。
俯いて頭をぶんぶんと振っているとふーたんがいきなり立ち止り思いっ切り背中にぶつかる。


「どうし…」

『お前に一つ命令するね』

「ん?」

『頭から血被るような殺し方やめるね』

「…まあ、努力はする」

『次頭から被たらワタシ怒るよ』

「………うん」


やばいやばい頭から被んないようにってどうすりゃいいんだよ?!殴り殺す?心臓刺す?
再び歩き始めたふーたんに引かれるがまま歩き、広間につく。


『あ、来た来たカンナ』

「シャルが司令塔?」

『まぁそんなところかな。情報処理だけど』

「ふーん、で?俺は正面から行けばいい?」

『そうだね』

「了解」

『フェイタン、フィンクス、シャルナーク、カンナ…準備はいいか?』


どうやら今回は5人で行くらしい。


『あぁ』

『大丈夫だよ』

『いつでもいいね』

「いいよ」

『カンナ、今日が初仕事だったわね?』

「うん」

『あなたの好物を作って待ってるから』

「好物?!クロロ、早く行こうぜ!!」


ニッコリと笑って言うパクの言葉に目を輝かせてクロロの服を引く。


『パクノダ、カンナに甘いねえ』

『そういうシャルも気に入ってんだろーがよ』

『そういうフィンクスもだろ?』

『ととと行くよ』










「…なんか、警備強すぎねぇか?つーか、銃とか持ってんじゃん」

『んー、俺らが来ることばれちゃってたのかな?』


俺たちは今お目当ての宝石がある美術館のすぐそばの木に登って様子を窺っている。
正面には10人の警備員、それから雇われたのだろう男が5人。


「15人か……」

『いけそう?』

「楽勝。向こうの世界じゃ何万と相手してたし」

『そういやそんな事言ってたな…』

「クロロ、殺していいんだろ?」

『あぁ、好きに暴れて来い』

「了解、っと。んじゃ行ってくるわ」


グッと足に力を入れた時今まで黙っていたふーたんが口を開いた。


『覚えてるか』

「覚えてるよ、頭から血を被るなだろ?」

『…』

「アイツらが俺を怒らせなきゃ大丈夫だって」


にこっと笑って軽く飛び美術館の真正面に着地する。


『なんだ貴様!!!』

『幻影旅団か?!』

「んー、幻影旅団なのか?俺って」

『ふざけやがって!!』

「ふざけてないけど…ま、いいや俺宝石取りに行きたいんだよね。どいて?」


そう言うといきなり何人かが銃を乱射してきた。
勿論軽ーく避けて間合いを詰め銃口を指でペチャンコにしていく。


『ひ、ひぃぃぃぃ!!』


恐怖心からか銃口が潰れたにも関わらず撃つもんだから暴発して悲鳴が木霊する。


「銃には銃で対抗しなきゃな♪」


銃弾が仕込まれた愛用の番傘を敵に向けて撃つ。
避けることもせずバタバタと死んでいく。
いつの間にか警備員の数は増え、恐らく美術館の半分以上がここに集まっているだろう。


『そこまでだ!!』

「わきゃあ?!ちょ、なんだこれえええええ!!」


足が動かなくなったと思って足元を見れば地面からいくつもの手が生えて俺の足を掴んでいた。
そういえばこの世界には“念”って力があるらしいし、これも“念”なのだろう。
しかも番傘も奪われて手の届かない場所にある。
幽霊などの類が全く無理な俺はパニックになり騒ぐことしかできない。


『くくく、じゃあな譲ちゃん』

「!!」


男が何かを投げ、周りから人がいなくなる。
まさか…爆弾。
避けようにも足が動かなくて。

ドオォォォン

爆弾は俺の目の前に落ち、モロに受けてしまった。


「っつ…」

『な、ば、化け物だあああああ!!』

「あ、足自由になった」


煙の中に俺の影を見つけたんだろう。
爆弾を投げた男、もとい手を出現させた男は後退る。
足が自由になった俺はゆっくりと近づく。
すると男は何かを踏み、バランスを崩して転ぶ。
何かを……踏んで?


「…てめえ」

『な、な、な……』


倒れた男の足元には俺の番傘。
殺気を込めて睨むと恐怖に狂ったのか番傘を掴む男。


「なに人の傘踏んでおまけに触ってんだァ?」

『この傘がそんなに大事か?!』

「あぁ、大事だ」

『くくく!!』


男は思い切り番傘を爆弾で燃えている炎の中に投げ入れた。
ブツン、と俺の理性を保っていた鎖が音を立てて千切れる。
俺は無言で男の前に立ち人間離れした脚力で回し蹴りで壁にめり込ます。
それを見た周りの男たちが一斉に向かってくるがすれ違いざまに首を手刀ではねて生きているのは俺と壁に埋まっている男だけ。
ふーたんからの命令のことなんか頭になく首をはねてしまったので前よりも大量の血を頭から被ってしまう。


『がはっ…』

「…」


苦しそうに咳き込む男の右肩を思い切り蹴ると無残にも吹き飛び、叫んでいる。
後ろにクロロ達の気配と息を飲むのを感じた。


『これ…カンナが?』

『30はいるだろ…つーかこんなに警備員いたのかよ』

『夜兎族、か』

『カンナ』

「…」


クロロ達の声は俺の耳に届かず、俺は右肩を押さえて呻く男の首を持ち高く上げてただ笑うだけ。


『カンナ』

「ふふ…っ」

『手、離すね』


心臓を貫こうとした右手をふーたんに掴まれて初めて振り返った。


「邪魔すんな」

『離すね』

「何で」

『もうここ用済みね。ととと帰るよ』


帰る?まだ殺し足りないんだよ俺は。
男を上に投げ左手で首をはねる。
次の瞬間にはふーたんに首を絞められていた。


「う…」

『ワタシ言たね、血を被るなと』

「…っふーた、ん」

『おいフェイタンやめろ!!』

『チ…』

「げほっ…」

『カンナ来い、担いでやる。ボロボロじゃねーか』


フィンの言葉に自分の身体を見下ろすと爆弾でぼろぼろになった着物に、ところどころ血が出ていた。


「大丈夫だよ、それより俺の番傘」

『あ?何だよどっかやっちまったのか?』

「あの男に投げられた」

『どっちの方向?』

「あっち、炎の中にあるっぽい」

『探しててやるからお前は先に戻って傷の手当てしろ』

「え、いいよ」

『駄目だよ、それにパクノダが待ってるんだろ?団長とフェイタンと帰っててよ』

『そういうこった』


結局フィンとシャルに傘を頼み俺はクロロとふーたんとアジトに向かっている。
ふーたんは怒りオーラを隠すことなく俺はビビり気味。


『…』

『カンナ、風呂に入って着替えてからパクノダの所に行け。俺が説明しておく』

「ん…ありがと」


アジトにつくとクロロはパクのもとに行き、俺はというとふーたんに手を引かれて浴室に連れて行かれた。
前と似てる。
違うところといえばふーたんも一緒に浴室に居ること。


「ふーたん…?」

『…』


名前を呼んでも答えてくれなくて困っているといきなりふーたんがシャワーを出した。
俺もふーたんも服を着たまま頭からお湯を被るはめになった。
驚いてふーたんを見るとおだんごにしていた俺の髪をほどかれ抱きしめられた。


「っ……?!」

『ワタシの命令』

「あ、えと…ごめん…」

『なぜ命令したか分かるか』

「…わかんねぇ」

『お前が血に汚れるの見るとイライラするね』

「へ…?」

『殺す事にはなにも感じないね。ただお前に汚い返り血が付いてるとイライラするよ』


ぎゅっと俺を包む腕に力が籠る。



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