自由気儘な猫

□お仕事しよう
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所変わって我が家。
帰ってくる途中の車内ではかすがによる説教が続き、親父から頼みごとの内容を聞くことが出来なかった。
マンションのでかさやらあたしの家の広さやら、歓喜の声を上げる馬鹿達をとりあえずソファに座らせお茶を出す。
親父にはコーヒー。


「で?頼みごとってなに」

『俺の会社がよぉ…厄介なことになっちまってな』


本当に困った様子の親父に差し出された資料をパラパラと流して読んでいく。
どうやら次に売り出す予定の企画がライバル会社に盗まれたらしい。
それを取り返して厳重なセキュリティを作ってほしいとのことだ。


「あー…まぁやれるだけやってみるけど、向こうのセキュリティと企画ファイルの保存場所にもよるね」

『あぁ、奴らの情報は少ないが資料に載せてる筈だ。出来なくても構わねぇ』

「わかった」


資料を片手にあたしは席を立ちパソコン部屋に足を向ける。
パソコン弄りが好きだったあたしに、と親父が買ってくれた最新のパソコンやら色々と機材が置いてある部屋だ。


『聖殿?』

「ユキ達は好きにくつろいでて」

『聖ちゃんは?』

「あたしはちょっとお仕事」


ひらひらと手を振ってあたしは部屋に入った。
機材が壊れないように、クーラーをつけてパソコンを起ちあげる。












『聖』


ふわりと肩にブランケットをかけてくれたのはチカだった。
まだクーラーには少し早い季節。
もともと低い体温が更に冷えている。


「ん、ありがと」

『馬鹿。身体冷やすな。ほらよ』


差し出されたのはホットココア。
手を休めてマグカップを受け取る。
チカはパソコンの画面を見て顔を顰めた。


『お前よくこんなの出来るよなぁ…ほんと』

「一回出来ると簡単だよ」

『かーっ、頭いい奴の言うことは違ぇな』


ケラケラと笑うチカに心が休まる。
疲れたなと思った時に来るんだから、いつもチカのタイミングの良さには恐れ入る。
特に会話もなくゆったりとしていると遠慮気味に部屋の扉が開かれた。


『あのー…さ』

「さっちゃん?」

『旦那達が作業見たいってうるさいんだけど…いいかな?』

「いいよ。ほとんど終わったから親父呼ぼうと思ってたんだ。親父も呼んでくれない?」

『ほんと?!ありがとう!』


顔を引っ込ませてから数秒でユキと伊達ちゃんが雪崩れ込むように部屋に入ってきた。
その後ろから二人を叱るさっちゃん、呆れて項垂れるかすが、楽しそうに笑う親父が入ってくる。


『…入っていいのか?ここは…』

「まぁ、暴れなきゃいいんじゃないの」


かすがに言われてここにはあまり人を入れたがらなかったな、と思った。
ふおおぉ、となにかに感動している馬鹿二人を放って親父に手招きをする。


「説明、するから」

『出来たのか?』

「楽勝。USBとかにコピーされた形跡もないし、隠す気もなかったから取り返すのは簡単だった。代わりに出鱈目なファイルを残しておいたし、何時気付くかって感じ」

『クククっ…流石俺の娘だな』

「……どーも。この資料を作った人にはさっき説明のメール送っといたから、後日信用の出来る人にだけ説明されると思う。社員がスパイってのも、可能性としてはゼロじゃないし」

『ああ』

「セキュリティは、あたしより腕が上の奴にしか入れないから今回の会社如きには二度と盗まれないよ」


それから、取り返した企画ファイルについてもいくつか提案をすると親父は嬉しそうに目を輝かせる。
鞄からノートを引っ張り出して来てメモを取り始めた。
改善点を指摘して親父と考え直して、を何度か繰り返したから最初より格段に良くなったはずだ。


『さっすが、俺の娘!!』




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