自由気儘な猫

□怖いお知らせ?嬉しいお知らせ?
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『聖』

「ん……?」


頭を撫でる大きな手と低い優しい声にうっすらと目を開けると綺麗な白銀の髪をした男がいた。


「ち、か…?」

『もう朝だぜ』


そういえば昨日、チカ泊まったんだった。
飯を食って……それからなにしたっけ?
意識がハッキリしないまま視線だけを動かすと散らかる酎ハイやらビールやらの空缶。


「頭…いてぇ」

『そりゃ久々にあんなに飲んだからなぁ』

「学校かー……」

『お、行く気だな』

「こじゅと約束したから…さ」


癖っ毛をわしゃわしゃと乱して体を起こすとベッドではなくソファに寝ていたことに気づく。
通りでリビングの散らかった様子が見えた訳だ。


『今日は俺が飯作ってやっから、顔洗ってこい』

「ん…さんきゅ」

『おうよ』


欠伸をしながら洗面所に向かい、顔を洗って再びリビングに戻る。
けして狭くない……というか独り暮らしには広すぎるこの部屋は高層マンションの最上階だ。
親戚の家、かすがの家を出ると知った親父(どうやって知ったのかは謎)が用意した部屋。
ここまで言えばわかるだろうが親父は金持ちだ。
世界的に有名な企業の社長をしているらしい。
詳しくは知らない、というか興味がない。


『ほらよ』

「チカの飯だー」


チカの作った飯はものすごくうまいから大好き。
朝からチカの飯が食えて上機嫌のあたしは学校に行くまで少し時間があるのをいいことにチカを誘ってベランダで一服することにした。


「今日もちょっと涼しい」

『あぁ、ここは特に最上階だからな』

「寒いけど眺め最高じゃん」

『確かにな』


本当にチカと過ごす時間は驚くほどにゆったりとして、心地良い。
あっという間に時間が過ぎ、昨日同様バイクで学校へ向かう。


『聖!!』

『聖ちゃん!!』

『聖殿!!』

『聖!!』

「……は?」


チカの近づくなオーラのおかげで昨日程女に絡まれることなく教室に辿り着いたかと思えば……
かすが・さっちゃん・ユキ・伊達ちゃんにすごい形相で名前を呼ばれて呆然とする。


『水!!』

「はあ?」

『風邪引いてない?!』

「え、あ…うん」

『だから行くなと言ったんだ!!』


上からユキ、さっちゃん、かすが。
なぜ水をかけられたって知ってるんだろうと思えば、あたしが寝たあとチカがみんなにメールをしていたらしい。


『つーわけで、今日からコイツが一人にならねぇように頼むわ』

『HA!言われなくてもするっつーの』

『わたしも極力聖と一緒にいるつもりだ』

「……んとに、心配性ばっか」


少し小さくなった飴をガリッと噛み砕き、席に座る。
嬉しいけど慣れてないからこっ恥ずかしい。
そんな照れ隠しを見透かしてるチカは喉の奥で笑いながらあたしの隣に座り乱暴に頭を撫でてきた。


『ちょっとずつ、慣れていきゃあいいさ』

「……ん」


どうやらあたしはチカに頭を撫でられると弱いらしい。
素直に頷くとこじゅが教室に入ってきた。


『さっさと座れー!…お、佐々木ちゃんと来たのか』

「……昨日言ったからな」

『くくく』

「…やっぱお前、馬鹿倉」

『………悪かった』

「ふんっ」

『なぁ…』

『あぁ、なんか…』

『『仲良くね?』』



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