自由気儘な猫

□モテ男
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ぴんぽーん


「ん……」


ぴんぽーんぴんぽーん


「うるさ……」


ぴんぽんぴんぽんぴんぽん


「っるさい!!」


ガチャッ


『ならとっとと開けろ!!』

「じゃ、おやすみ」

『待て待て待て、学校行くぞ』


転校してから一日が経ち、昨日馬鹿倉から言われた通りチカはご丁寧に一時間前に家にやって来た。


「やだ」

『はあ?』

「なんか今日は行く気分じゃないの」

『…んとに気分屋だなお前』

「自分に正直なだけだっつの」

『はいはい』


部屋に通すとチカは当たり前のようにソファに座りテレビをつける。
あたしはキッチンでスクランブルエッグを作り食パンに乗せて二人分をテーブルに置いてチカの隣に座った。


「どーぞ」

『お、さんきゅ』

「……今日ちょっと寒い」

『まあ5月だからな』

「パーカー着て行こっかな」

『着ろ着ろ、お前寒がりだからな』


食パンを頬張りながらのんびりと話す。
チカといる時間が一番落ち着くし一番棘がないと思う。
喧嘩をしてる時とは天と地の差。


「モテ男って大変そうだね」

『あ?』

「昨日の放課後、囲まれてたじゃん」

『あぁ、あれか……』

「元親さまーだって、媚びる女は怖い怖い」

『嫉妬か?』


頭をくしゃくしゃと撫でられてハッとする。


「そんなんじゃ…!!」

『わーってるよ』

「違っ……ただ」

『ん?』

「あたしの知らないチカがいて、嫌だった」


あんなに女に騒がれてるなんて知らなかった。
数少ないあたしの大切な人間だから…急に距離が離れたみたいで嫌だったのだ。
荒れまくってるあたしにはかすがとチカとヤスしかいなくて、なのにチカの周りにはいっぱい人がいる。
この学校に来て改めて思い知らされた。


『俺のこと一番知ってるのはお前だぜ?』

「…ほんと?」

『おう。特にあの女共はなーんにも知らねぇよ』

「元親…」


あたしは甘えたい時、あだ名じゃなくて名前を呼ぶ。
それを知ってるチカは壊れ物を扱うように優しく抱き締めてくれる。


「元親ぁ〜…眠い」

『学校行きゃ寝るんだから我慢しろ』

「……くそう、着替えてくる」



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