瞳に魅せられて
□ぽっかり空いた穴
1ページ/2ページ
「みんなで行くの?そんなに大きな仕事?」
ある日フィン兄ちゃんに資料を渡され、出来るなら全員参加だと言われた。
『あぁ、なんでも綺麗な瞳を取りに行くとか』
資料をめくろうとすれば息を飲んだはーくんに取り上げられる。
〔フィン、悪いなちょっと姫借りるぜ〕
『…あぁ、団長には俺から言っておく』
〔頼む〕
「え?え?はーくんなんで?」
〔姫はちょっと修行しねぇとな〕
「なーくん修行ってなんの?」
〔俺とハルキ以外の奴らも呼びだせるようになったほうがいいぜ〕
嘘、だって二人がいればあたしは十分生きていける。
そこらの念能力者には負けない。
ねぇ、その資料にはなにが乗ってたの?
綺麗な瞳って、なに?
「ねぇ!!」
〔頼むから、今は聞かないで…〕
「っなー、くん」
〔姫、ナツキ、今から山で修行だ〕
「……うん」
*
山に籠って二週間―――
あたしは二人の他に、治癒力がダントツの“あっちゃん”、防御力がダントツの“まっつん”、死体を跡形もなく片付けてくれる“みぃな”を召喚出来るようになった。
「あっちゃん、まっつん、みぃな、これからもよろしくね」
〔任せなさい♪ナツキとハルキの可愛い娘だもん〕
〔絶対姫には指一本触れさせないよ〕
〔姫ちゃんは気にせず狩ってればいいのよーん〕
〔さて、そろそろ戻るか〕
「うんっ!」
兄ちゃんたち、もう仕事終わったかな?
あっちゃんとまっつんとみぃなを紹介しないとね。
いつも通り元気にアジトに戻るとまだ誰も戻ってきてなくて少しガッカリ。
なーくんとはーくんが冷蔵庫に飲み物を取りに行っている間にテレビをつけてソファに腰を降ろす。
「ニュースでも見るかなぁ…」
<世界七大美色の一つと言われる緋の目を持つクルタ族が何者かに襲われた模様です>
「っ緋の、目?」
<眼球だけ抉り取られているようです>
「お母さんたちと……同じ、瞳」
〔姫〜…っ姫!!〕
「なーくん、あたしの居た村って」
〔…あぁ、クルタ族だ〕
「これ、みんながやったのかなぁ?」
〔…だろうな〕
「だから、仕事に行かせてくれなかったの?あたしの故郷だから」
知らなかった。
あたしがいた村のことなんて何一つ知らなかった。
あの綺麗な緋色は世界七大美色なんだ。
もう、誰もいないんだ。
。