瞳に魅せられて

□あたしの瞳
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『ほれ』

「わ、これ、なに?」


フィンにーちゃんと一緒にホームの外にでたあたしはゴミ山から拾った箱を渡され、首を傾げる。



『オルゴールだ』

「オルゴール?」

『ここをこうして回せば…ほらな?』

「わあ!すごいすごい!!」


にーちゃんが箱の横についていたネジを回せば綺麗な音楽が流れた。
しばらくすると音楽は止まってしまい、またネジを回せば音楽が流れる。


『気に入ったか?』

「うん!」

『なら持って帰りゃいい』

「フィンにーちゃんありがとう!」

『…あぁ』


フッと笑ったにーちゃんはまたゴミ山漁りを始め、あたしはオルゴールを流しながらにーちゃんを見ていた。


「えへへー♪」

『っレイ!!』

「っ?!」


どこからかライフルで狙撃され、難なく交わしたが…


『大丈夫か?!っくそ、どこだ!!』

「オル、ゴール」


手に持っていたオルゴールに弾が当たり壊れてしまった。
慌てて駆け寄ってくるフィンにーちゃんの声はあたしの耳には届かない。


『レイ?オイ、どうし―――』

「ゆるさない……っころしてやる!!」


あたしの瞳にうつる世界はいつもより青っぽい。
瑠璃の瞳になったあたしは身体から溢れ出るオーラを鎮める術を知らない。


『お前っ…瞳が…』

「【悪神の召喚-サモンズイーヴィル-】……なーくんおいで」

〔おうよ、狩ってくらぁ!〕


意気揚々としたなーくんは大きな鎌を振り回して狙撃者の方へと向かっていった。
あたしは両手で顔を覆い、うずくまる。
瑠璃の瞳を押し込めなきゃ。
恐がられるのは嫌だ
気味悪がられるのは嫌だ
もう、失うのは、嫌だ!!


「フィン、にーちゃ…」

『瞳、見せろよ』

「や…っ」

『綺麗だから』

「きれ、い?」


恐る恐る手を下ろし、瞳を合わせるようにしてしゃがむフィンにーちゃんを見る。
そっと頬に触れられ、ジッと見つめられた。


『青…瑠璃色、ってやつか』

「…きもちわるい?」

『まさか、すげー綺麗だぜ?』

「ほ、んと?」

『あぁ』

「みんな、きらいっていうよ?きみがわるいって、そのめでみないでって」

『俺たちは誰もそんなこと言わねぇよ』

「こうふんじょうたいになるとあおくなるの」

『そうなのか』

「みんなはあかいのにあたしだけあおなの」

『俺はお前のその瞳、気に入った』

「っ…フィンにーちゃん!!」


あたしは幸せ者だ。ぎゅっとにーちゃんに抱き着けばあやすそうに背中を撫でてくれる。

家族を与えてくれて
笑いかけてくれて
おんぶも抱っこもしてくれて
髪を撫でてくれて
あたしの村の人たちとは正反対のフィンにーちゃん


〔終わったぜ、大丈夫か?〕


フィンにーちゃんから少し離れて後ろを振り返るとなーくんがいた。
血の匂いを纏い鎌を背負った彼は顔をしかめてあたしとフィンにーちゃんの頭に手を乗せた。


「なーくん…」

『オイやめろ馬鹿』

〔姫を怒らせたクズはもういねぇよ〕

「ん、あのね?フィンにーちゃんにもらっただいじなオルゴールをこわされちゃったの」

〔そっか、姫は兄ちゃんが大好きだもんな〕

「うん大好き!」

『…レイの周りの人間はその瞳を嫌ったらしいな』

〔あぁそうさ。あの人間共は自分たちと違う色をした姫を恐れた〕

「なーくん、フィンにーちゃんはね、きれいだっていってくれたよ」

〔よかったなぁ姫。言ったろ?あそこの人間だけだって〕

「うん!!」

〔だから隠す必要もねぇの〕


にーちゃんたちもねーちゃんたちもきっとそう言ってくれるよね?
隠さないよ、なーくん。



 

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