二度目の人生

□恐怖と決意
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城に戻る道中も俺はいつも通りへらへらと笑っていて幸村をからかったりしていた。
限界を迎えたと同時に城に着き、急いで翔を連れて部屋に行く。


『柚稀様?』

「しょ、う」

『……今川に何を言われたんです』

「織田に、殺されたはずだって……」


そう言われた途端、死んだ時の記憶が一気に蘇ってた。

矢が心臓に突き刺さる感触も
息が出来ない程の痛みも
じわじわと弱っていく心音も
体が内側から冷えていく感覚も
全部全部、生々しく蘇ってきたんだ。

部屋の床にうずくまって震える俺を翔が力強く抱き締めてくれる。


「は、っ……」

『落ち着いて下さい。ゆっくり息を吐いて』

「はぁっ……はぁ」

『貴女は生きているんです』


生きている。
その事実がどれだけ嬉しいか、一度死んだ俺は嫌と言うほどわかる。


『貴女の心臓はたしかに動いている』


ギュッとチューブトップを握り締めてドクドクと少し速い心音に酷く安心する。


『もう、誰にも殺させはしません。俺が守ります』

「翔……っ」

『大丈夫です』


大丈夫と繰り返し、背中を一定のリズムで叩いてくれる翔の服を掴んで日が暮れるまで泣いた。


『こうして泣く柚稀様を抱き締めるのも久しぶりですねぇ』

「…っ……」

『柚稀様を支えるのが仕事なんですから、もっと頼って下さいね』

「おー………ありがと」

『いえ。今夜は宴を開くようですよ』

「……酒」


思う存分泣いた俺はぱたぱたと宴会場に駆けていく。
後ろから翔が何か言いながら追い掛けてくるもんだから必死に逃げて襖に手をかけた。

スパァァァン


「酒!」

『…入って来て早々酒って』


呆れる猿飛にへらりと笑い信さんの隣に腰を下ろす。


『柚稀お主この戦を利用しおったな?』

「あは、なんのことで御座いましょう」

『全く頭の良い娘じゃ』

「えー、だって利用しないほうが馬鹿でしょ」

『姉上、利用とは……?』

「今川はきっと各地に今回の戦のことを広める」

『はい』

「なら俺、桜姫の存在も広まるんだよ」

『おお!!』

「会いたい奴もいっぱいいるし、これで会いに行ける」


みんな元気かな。
まずは政宗んとこ行こうかな。


『では皆の衆!今日は桜姫が無事に復活戦を遂げた事を祝っての宴じゃ!!』

「あれ、俺?」

『そうですぞ!姉上!!』

「あはーまじか」

『姐さんんん!!』

『最高っすゥゥ!!』


宴が始まって早々、野郎共が酒を片手に騒ぎ始めた。


「俺が最高なんて知ってるっての!野郎共じゃんじゃん酒飲めぇぇ!!」

『うぃっす!!』

「潰れるまで飲んでこそ舞桜衆の男だぞ!!」


武田軍の皆さんはなんて無茶苦茶な……って顔で見てくるけど、俺ら舞桜衆の宴って言ったら潰れるまで飲むのが普通なんだ。



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