二度目の人生

□オカン降臨
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『桜姫!起きなさい!!』

「んぅ……」


耳に届く低い声に目をゆるりと開けるとオレンジと迷彩が見えた。
幸村の忍、猿飛佐助だ。


「やー」

『やー、じゃなくて!』

「まだ眠い……」

『ほら起きてくださいっての』


バサリと布団を奪われて体を丸めた。
眠い……ほんとにこの世界の人間は早起きだ。
前世でも朝は弱かった気がする。


「む〜…猿飛ぃ」

『ご飯、冷めちゃいますよ』

「やだ」

『なら起きてくださいって』


目を擦って渋々体を起こすと猿飛が息を飲んだ。
どうしたんだろうと首を傾げる。


『と、とりあえず早く来て下さいね』

「うん」


俺の返事を聞くと猿飛は姿を消した。
相変わらず忍ってのはすごいなぁと感心しつつ部屋を出る。
早く行かないと猿飛と翔に怒られるし、何よりご飯…いや、味噌汁が冷めるなんて嫌だ。


「おはー」

『姉上!!おはようござ―――』


朝餉をとる部屋に入りへらりと挨拶をすると幸村が元気に応えた。
と思えば俺を見て顔を真っ赤に染めて震えている。
猿飛といい幸村といい、なんなんだ。


『は、ははは破廉恥でござるぁぁ!!!!』

「…はあ?」

『柚稀様、きちんと着てください』


呆れ顔の翔に言われてもきょとんとしていると、肩までずり落ちた着物を直された。


「へぁ?なに、これのせい?」

『良いですか柚稀様。俺らは見慣れたもんですが彼らにとっちゃ目に毒なんですよ』

「えー」

『えー、じゃないです。猿飛殿、幸村様、申し訳ありません』

『破廉恥ですぞ姉上!!』

「今日幸村の分の団子も食ってやる」

『そっ、それだけは!!!』

「うそうそ、いただきまーす」


騒ぐ幸村を無視して味噌汁を啜る。
うん、うまい。
そこで猿飛の視線に気がつく。
朝はぼーっとして気が緩みすぎだなあ。


「猿飛?」

『っ!』

「どうした?あ、服?ごめんごめん」

『あ、明日からは気をつけてくださいよっ』

「んー、たぶん。ってか、敬語やめないか?」

『…は?』

「俺、敬語あんま好きじゃないの」

『翔は敬語じゃないですか』

「コイツは俺の側近だし野郎共は頑固だからさ。とにかく、敬語なし!」

『……わかった』


前髪をくしゃりと乱しながら了承した猿飛にふにゃりと笑うと目を逸らされた。
うーん、嫌われてる?
なんでだろうと思うけどあまり深く考えず、というかまだ頭が起きてないから考えれない。
ご飯をパクパクと食べていくと嫌いな人参を発見して翔を呼ぶ。


「翔〜……」

『まだ人参食べれないんですか?』

「まだってなんだよ、人参なんか大っ嫌いだ」

『……桜姫?人参も食べないと餡ころ餅なしだよ』

「なっ…………鬼!!」

『あ、姉上ここが頑張りどきでござる!!』

「うぐ……」


翔に人参を口に突っ込まれてむぐむぐと噛んで無理やり飲みこんでやった。
俺はすぐさま味噌汁を飲み半泣き状態だ。
ひどい、頭領の俺に人参を突っ込むなんて。


「おぇ……っ」


人参の不味さに撃沈していると翔が味噌汁のおかわりを入れてくれたので少し機嫌がなおる。
単純だなんて思わないで。


『好き嫌いは駄目だからね!』

「猿飛って翔と気が合いそうだな…」





(オカンが増えた)
 

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