二度目の人生

□ただいま
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『入れ』


襖の奥から威厳のある、懐かしい声が聞こえてきた。
猿飛によってスッと開けられた襖の奥に足を踏み入れて姿勢を正す。


『お主……?!』

「御無沙汰しております、信玄公」

『舞桜衆の桜姫、の生まれ変わりだそうですよ』

『生まれ変わりだと?』

「舞桜衆頭領としての私は確かにあの戦で命を落としました。しかし、私はこの時代の記憶を持ったまま数百年後の日ノ本に生を受けました」

『ほう…』

「そこで19年間過ごし―――なぜか再びこの時代にいました」

『後半すごい適当なのは気のせい?』

「だって私もわかんないもん」


私にしちゃ頑張ってまとめたんだから!!


『そうか、有り得ない話ではあるがお前が言うのならば真なのだろう』

「さすが信玄公」

『して、いつまでそのように仮面を被っておるつもりだ?柚稀よ』


フッと緩んだ信玄公の威圧に、へらりと笑う。


「えへへー、久しぶり信さん」

『し、信さん?!』

『久方ぶりと言うても、この世界ではお前が死んで2年だ』

「へ?!通りで信さんも猿飛も若いと思った」

『ちょ、ちょっと待ってよ。信さんって……』

「あー…私、子どもの頃信さんにお世話んなってさ。父親みたいな感じなんだよね」

『へ、へぇ……そうなんだ』


それから暫く信さんから私が死んでからの戦国の世の話を聞いたり、現代の話をしたり、他愛もない会話をした。


「じゃあ、野郎共と約束があるんで失礼しますね」

『うむ。あやつには会わぬのか』

「…………会いたいけど」

『ならば後で佐助か翔に案内してもらえばよい』

「はーい……」


信さんの居た部屋を出て猿飛と二人で廊下を歩いていると、なにか考え込んでいた猿飛が口を開いた。


『あやつって、真田の旦那でしょ?』

「……うん」

『アンタらどういう関係?アンタが死んだ時の旦那の悲しみようは異常だったよ』

「泣いてただろ?」

『泣いてたなんてもんじゃないよ。数ヶ月ご飯も団子も全然食べないし』


幸村が好きなご飯も団子も食べないとは。


「私の名前、知ってる?」

『は?柚稀でしょ』

「氏は?」

『そう言えば、聞いたことないね』

「真田。私の名前は真田柚稀」

『―――?!』


猿飛の目が見開かれる。
そりゃそうだ。
主の血縁者だなんていきなり言われたんだから。


「あいつは、幸村は腹違いの弟。私の母上は身分が低くてね、真田家から追い出されちゃったんだよ」

『じゃあ、じゃあアンタは実の弟と刀を交わして……』

「うん」

『旦那を庇ったのは、弟だから……?』

「そーいうこと」


呆然と立ち尽くす猿飛を置いて私はさっきの庭に飛び出した。
わかっていた、わかっていたけど……


『『姐さああああああん!!!!』』


涙ぐんだ男に抱き着かれるのはなかなか辛い。
むさ苦しいし、力は強いし。


「は、な、れ、ろォォォォォ!!」

『ぎゃああああ!!姐さんがキレるぞーっ!』



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