二度目の人生
□その、まさかです
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「……………」
どういうことだこれは。
私は絶賛華の女子大生という素晴らしき人生をエンジョイしていたはずだ。
なのになんで
「なんで森?!」
まぁ確かにヤンチャしてたから今日も物騒なモン持った女共に追っ掛けられてたんですがね!!
撒くために忍顔負けの身体能力で公園の木の枝に座ったんだっけ。
そこで寝ちゃって、起きたら森にいたってわけだ。
「火薬の匂い―――それから、血の匂…い……?」
嘘でしょ?
私の居たはずの場所ではこんな匂いするわけがない。
そこまで考えて、ある答えに辿り着いた私は呆然とその場所にへたりこんだ。
「嘘………嘘嘘嘘!!」
暫く嗅いで無かった匂いに頭がクラクラする。
19年振りの匂い。
ちなみに私は19歳。
ここまで言えばわかるよね?
前世で嗅ぎ慣れた匂いなんですよ。
「落ち着けー、私!!ひぃ、ひぃ、ふぅぅ」
はい、奥さん力んで!!って呼吸方法で落ち着きを取り戻しつつあった私は猛スピードで此方に向かってくる気配にサッと戦闘体勢を取る。
「出てきな」
『へぇ、なかなかやるね』
そう言って軽やかに目の前に降りてきたのはオレンジの髪に迷彩柄のポンチョのような服を来た男。
「っ!!」
『アンタ何者だ』
「さる、とび?」
『?!』
あぁ、やっぱりここは戦国時代なのか。
目眩がして後ろの木にもたれかかると猿飛はすかさずクナイを私の首に突き付けた。
『なぜ俺様の名前を知っている』
「……顔、良く見てよ」
『さっさと答えな』
「舞桜衆の野郎共は元気?」
『―――っなんで』
「私の名は、柚稀」
名前を言った途端、これでもかと言うほど猿飛の目が開かれて明らかに動揺している。
『嘘つくな。あのお人は戦で…』
「真田を庇って死んだはず」
『っ』
「確かにあの時、桜姫はこの世を去った。私はその生まれ変わりってやつ、だと思う」
『そんな話を信じろって言うのかよ?』
「私だって信じられない。とりあえず、武田軍に引き取られた野郎共に会わせてくれない?」
舞桜衆の絆の強さは底無し、舞桜衆だけしか知らない事だってたくさんある。
それを見てもらえばきっと私が柚稀だと信用してくれる。
その意図を汲み取ったのか猿飛は私を肩に担いで木の上を移動し始めた。
「ちょ、猿飛!!」
『なに』
「拘束とかは?!私明らか怪しいじゃん!!」
『アンタが本当に桜姫なら逃げたりしないだろ』
「……そうだけど」
私がいた森は随分と甲斐に近い場所だったようで、城に着くまでにそう時間は掛からなかった。
『今は鍛練中だろうから全員集まってるよ』
「あーちょっと待って」
『なにさ、今さら違いますなんて許さないよ』
「違う違う!!そのー……久し振りだから緊張して…」
『行くよ』
無視なのね、私の緊張なんかは無視なのね。
ストン、と鍛練中の兵士たちがいる庭に着地した猿飛は私を肩から下ろした。
。