やんちゃひめとちしょうさま

□あかとあおと、ふうらいぼう
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「元就さ……ま?」


パタパタと廊下を駆けて勢いよく部屋の襖を開け放つ。
これはいつも通りの行動で、きっとまた元就様は溜め息をつきながらも微笑んでくれるのだろうと思っていると―――


『Ah?誰だこの女』

「へ??」

『……今日は用があると言っただろう』

「う〜ん…言ってたような気もしますね」

『馬鹿者め』


部屋には予想外にも私の知らない男の人が5人もいたのだ。
鉢巻きをした赤い人、眼帯をした青い人、長い髪を高い位置で結っている人。
それから赤い人の後ろにいる迷彩柄の人、青い人の後ろにいる怖い顔の人。


「じゃあ元就様忙しいんですねー…」

『どうした』

「ちょっと色々ありまして」

『お嬢さん、毛利の兄さんと仲良いねぇ』

『そうでござるな!どういったご関係なのですか毛利殿?』

『sirter…にしちゃよそよしいよな』


いつの間にやら私の話題で、入口に立ったままの私は綺麗な顔立ちの三人にまじまじと見つめられている。


『貴様ら見すぎであろう』

「……え、と」

『椎那来い』

「あ、はい」


視線に戸惑いながらも元就様の隣に腰をおろす。
とりあえず、挨拶かな…?


「毛利元就が妻、椎那にございます」

『『『『『妻ぁ?!』』』』』


元親さんにしろこの人たちにしろ、なぜこんな反応なのか。
智将毛利元就に情はないということなのだろうか。
まぁ、自軍の兵を捨て駒というお方だから仕方ないのかな。


『姫様ぁぁぁぁ!!』

「っやば!元就様匿ってください!!」

『…何をしたのだ』

「それは後程っ」


お菊の怒声が聞こえてきて慌てて押入れに隠れた。
実はさっき、台所でつまみ食いをしてお菊に追い掛けられていたのだ。


『元就様失礼致します』

『何用ぞ』

『姫様をお見掛けになられませんでしたか?』

『知らぬ』

『…そうでございますか。お騒がせいたしました』

『待て。あやつが何をした』

『つまみ食いでございます』

『……そうか』


押入れで息を潜めながら元就様とお菊の話を聞いていた。
このまま静かにしていればきっとバレる事は無い。
そう、このまま静かにしていれば―――


『毎度毎度、学習能力というものが無いのでございましょうか』

「っちょっと、学習能力ぐらいあるわよ!!」

『やはりおられましたね姫様』

「……あ」

『…馬鹿者が』


思わず反論をしながら押入れから飛び出してしまい、怖いぐらいに満面の笑みのお菊に見つめらる。


『姫様何度言えばわかっていただけますか?』

「ゔ……ごめんなさい…でも、今日はすっごい美味しそうな野菜があったから!!」

『あの野菜は片倉様からいただいたものですからね』

「片倉様??」

『俺のか』


渋い声が聞こえて視線を向けると青い人の後ろにいる怖い顔の人だった。


「っあなたが作ったんですか?!」

『はい』

「すーっごい美味しかったです!!」

『それは良かった』

『Ha!小十郎、良かったじゃねぇか』

『姫様今度同じ様な事をされた場合は一日私どもの仕事をして頂きますので』

「え゙……」



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