やんちゃひめとちしょうさま

□やさしいおにさん
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『元就様!!!!』


兵の声が聞こえた気がした。
部屋で一人、私は元就様の大好きな日輪に祈るように座っていた。
元就様が戦に出る度にこうして元就様の無事を祈っている。
今日は西の海の鬼…長曾我部元親と戦だと言っていた。


「……元就様?」


助けに行かなければ。
なぜかそう思って、私はいつも抜け出す時に使っている抜け道を駆け出していた。
何が出来るかわからないけど、とにかく行かなくちゃいけない気がする。
咄嗟に持ち出した刀を腰に下げてひたすらに走る。


「元就様…ご無事で……っ!!」





























(元就side)


なんたる失態。
我が、こやつに捕らえられるなど。


『よう、毛利さんよ』

『……』


長曾我部元親、此度の戦の相手。


『いつ頃お前さんの兵は助けに来るんだろうな』

『そんなもの来ぬわ』

『…ぁあ?なんでだよ』

『駒は自分の意思でこのような所まで来ぬ』

『まだお前駒なんざ言ってんのかよ……』

『駒は駒よ』

『……寂しい奴だな』

『…………何?』

『独りぼっちじゃねぇか』


独り、だと?
ふざけるな、我には……我には―――


「ふざけないで」

『っ?!』

『ぁん?なんだぁこの女』


“椎那がいる”
そう言おうとして息を飲む。
なぜこやつがここにいる。


「長曾我部元親、今すぐさっきの言葉を訂正しなさい」

『っ…なぜこんな所におるのだ!』

「えへへ、来ちゃいました」


なぜ、来たのだ。
なぜ、無邪気に笑ってられるのだ。
ここは敵地だぞ。
呆然と椎那を見つめていると長曾我部が椎那を抱き締めるように後ろから覆い被さった。


『嬢ちゃん、何者だ?』

「っ離して!!」

『貴様…今すぐ椎那から離れよ!』


腹立たしい。
椎那に触れても良いのは我だけぞ。


『へぇ…えらくご執心みてぇじゃねーか』

「っ元就様お怪我はないですか?」

『……ない』

「そう、ですか……よかった」

『あんた…』

「今すぐ元就様を解放してください。このままではあなたの軍も死人が出ます」

『……っはあ』


溜め息を吐き長曾我部は椎那を解放し、頭を掻きむしる。
椎那はと言えば我に駆け寄りそのままの勢いで抱き着いてきた。


「元就様……っ!!」

『…っ馬鹿者!!このような所まで来おって!!敵地とわかっての事か?!戦も出来ぬお前が、何をしに来た!!』

『お、おい毛利……』

「馬鹿ですよ!!怖くて仕方なかったですよ!」

『ならば!』

「自分が死ぬよりも貴方様が怪我をする方がよっぽど怖いんです!」

『……何…?』

「馬鹿は元就様です!!」

『おーい……』

「何ですか!!」

『あんた…何者だ?』

「……申し遅れました。毛利元就が妻、椎那にございます」

『妻ぁ?!』



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