やんちゃひめとちしょうさま

□たいようとつき
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「やっぱ広いね……」


この城に来て1日、そして探検に出て数時間。
流石に中国を治める殿方の居城となると物凄く広い。
正直に言うと、迷子です。
そんなことも気にしない私はふらふらと歩き続けていた。


「……?こんな時間にまだ起きてる人がいるんだぁ」


人の事を言える立場ではないが、もう陽が沈んで大分経ちみんな寝静まっている。
誰だろう、とそっと少し襖を開ければ深緑の着流しに身を包み執務机に向かう―――


「……毛利様…」


我が夫の姿があった。
私の小さな声を捉えたのか、毛利様はそのままの体勢で口を開く。


『……何用ぞ』

「いえ、用というほどのものでは御座いません」

『ならばこのような時間に何をしている』

「ね、寝付けなかったので」

『…………』

「……城内を散歩していたら、迷子になりました…」


馬鹿な女だと思われたかな?
いや、出会い頭にオクラと言った女にこれ以上絶望(?)はしないよね。


『…馬鹿者め』

「ゔ……」

『入って暫く待っておれ』

「……へ?」

『我の仕事が終われば案内してやる』

「あ、りがとうございますっ」


仕事の邪魔にならないように静かに部屋に足を踏み入れる。
少し開いた襖から月の灯りが入っていて、無意識に縁側に出た。


「わぁ……満月」


通りで明るいわけだ。
すとんっと縁側に座り夜空に浮かぶ真ん丸の月を仰ぎ見た。
綺麗だとか、美しいだとか、言葉では言い表せない程に心を奪われる。
私は昼夜問わず空を見るのが大好きだけど、やっぱり一番は満月が浮かぶ夜空かな。


「……届かない」

『月が欲しいか』

「あ、毛利様。欲しいわけじゃないんです。ただ……」

『……』

「届かないのは、悲しい、です」

『フン……』


聞いといて鼻で笑うってなによ。
なんて思っていると途端に睡魔が襲って来て―――


『っおい…?!』

「すー、すー…」


上半身が横に倒れてそのまま寝てしまいました。
毛利様に迷惑をかけてしまうから起きて部屋に戻らなくちゃいけないのに……









「ん……」

『やっと起きたか』

「っ毛利様?!え、あの…ここ、は?」


パッと目を開けると毛利様の綺麗な顔が視界に入り驚いて上半身を起こす。
縁側?もしかして、私ったら……


『覚えておらぬのか。貴様は昨夜そのまま寝よったのだ』

「す、すみません……昨日少し城内をはしゃぎ回って疲れが…」

『もうよい。この部屋を出て右に行った突き当たりが貴様の部屋だ』

「…ありがとうございます。あ、毛利様っ」

『……何ぞ』

「おはようございます!!」



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