二度目の人生
□その、まさかです
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『これはこれは猿飛殿!』
『どーも』
「っ翔!」
『?貴女は?』
いち早く猿飛に気付き手を止めたのは私が一番信頼していた側近の翔だった。
いきなり現れた女に名前を呼ばれて困惑しながらも私の顔をまじまじと見ていた翔の表情が驚愕に変わる。
『柚稀様?!いや、でも柚稀様はあの時………』
『この女が桜姫の生まれ変わりだなんて言い出してね』
『…確かに、柚稀様にそっくりです』
なんだなんだ、と集まってくるのはどれもこれも見覚えのある舞桜衆の野郎共ばかりでつい涙腺が緩みそうになる。
『コホンッ……では、我々の立場は?』
「武士ではなく喧嘩屋」
『柚稀様の好物は?』
「餡ころ餅!!」
『ふむ……では最後、柚稀様の姓と大切なお方の名前を耳打ちで』
「………真田柚稀、大切な奴は弟の真田幸村」
『っ!!』
バッと私の顔を見た翔に、あの頃のようにへらっと笑う。
後ろに立っている猿飛がどうだったのかと聞くも翔の耳には入っていないようだ。
『柚稀、様…?』
「うん」
『柚稀様!!!!』
ぎゅうっと強く抱き締められて私も、きっと後ろの猿飛も、周りの野郎共も目を丸くしている。
「………翔」
『柚稀様……っ!!』
「男が泣くんじゃねぇよ全く」
『誰の、せいですかっ』
「ごめん」
『許しません。……猿飛殿、このお方は間違いなく桜姫……柚稀様です』
『本当、なんだ』
翔の腕から解放された私は猿飛にドヤ顔をしてやった。
にしても、これは俗にいうトリップというやつだろう。
まさか前世の時代に来るとは……
『桜姫、大将に会ってもらえる?』
「あぁ……信玄公か。てことは信じてくれたんだ?」
『舞桜衆の人が桜姫だと言ったんだ、信じるしかないよ』
「そか。翔、他の野郎共に適当に説明しといて?信玄公に会ってからまた来るよ」
『御意』
翔に軽い指示をした後猿飛に連れられて現代の服から着物に着替えさせられ、信玄公がいる部屋の前に来た。
『大将、猿飛佐助只今戻りました』
『入れ』
(まさか)
(またこの時代にこれるなんて)