あの時、あの瞬間

□嘘と本当
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「琉生君!彼女いたんですかっ!?」
「なんで敬語……?まあ、いたけど」
う、噂が……本当に?
「いたんだ……」
「…………。別に、今は……いないけどな」
パラパラとノートを開きながら琉生君は言った。
「……ふうーん」
「……お前は?」
「私?」
「うん」
「いないよ。っていうか、私こんな性格じゃん?好かれる要素がないような気がする。乙女っぽくないっていうか……むしろ……がっつり?」
「ぶっ!違うだろ、その表現」
笑われた……。
でも、笑顔が見られたしいいか。
「でもさ、そういう性格もいいと思うけど?」
「ええー?例えば誰が好むのさー」
「俺」
「…………。……ぇ」
「お。解けてんじゃん。がんばったな」
「……ぅん。……そりゃ……寝不足になりながらも……がんばったし……」
「そっか」
頭を、撫でてくれた。
待って。
え?
ええ?
これって、さ。
両、想い?
私は、何も言えなかった。

次の日。
「何もわからなかった……」
もちろん昨日の琉生君のあの言葉。
『ええー?例えば誰が好むのさー』
『俺』
告白……のつもりなのかな?
はぐらかされた気もしたし……。
なんなの?
「よっ!葉月。今日もおっとこらしー」
またか!
彼の名前は、萩原力輝(はぎわらりき)。
いっつも教室でからまってくるヤツ。
「うるさいっ!あんたねー、いつまで私を引っ掻き回せば済むのさ!」
「一生?」
「いつまでいるつもりだよ!」
「俺さ、葉月のことが好きー」
これも毎日言われてる。
からかってるんだ。
「はいはい。冗談ね」
「……冗談じゃ、ねーよ」
「え?」
「俺はっ……!」
「葉月」
「あ、琉生君。校門で会うなんて珍しー」
「まあな。じゃ、教室行こう」
「えっ、ちょっ……!?」
わからない。
琉生君が考えてることが。

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