novel♯

□裏切り
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将軍、長らく所在が不明であった
アリティアの残党がも戻ってまいりました。


そうか、ご苦労…
それは好都合だ。
奴らを引きこんで一気にけりをつける。


わかりました。しかし、
あの者はどういたしましょう?


聖騎士アベルか。
もし我らを裏切るようならかまわん!
人質を殺せ!


奴とて、一度は軍を引いた身。
今更王子に忠誠を誓うこともあるまい。


ふふ…
…奴らアベルを敵にどう戦うか。
アベルはかつて「黒豹」として
アリティアでは有能な聖騎士
だったようだが…
これは見ものだな。















裏切り 1














「もうすぐだ…」



祖国であるアリティアが
ハーディン皇帝の策略にはまり、
城が占拠されてから数カ月…


アリティアの王子マルスは、
少数かつ精鋭の軍を率いて
祖国を取り戻そうと、
国境付近に到達した。






「みんな、もうあと少しだ。
 あと少しでアリティアに着く。

 今も苦しめられている
 祖国の人々を一刻も早く
 救い出さなければ…

 気が抜けない戦いになる。
 アリティアのために…
 皆の力を貸してくれ…!」



大きな戦いの前に、
マルスは必ず仲間に
声をかける。

いつもは冷静な王子も
今回は気持ちも高ぶり、
声を震わせながら話した。



「アリティアのために…!」


その王子に応えるかのように
仲間と兵士たちは一斉に王子に
敬礼をした。





「これより最終準備にかかる!
 各自持ち場について
 戦闘の準備、作戦を確認!」


王子の側近であり、
アリティアの騎士団の
リーダー的な存在である
カインが大きな声をあげた。









「王子…少しいいですか?」



敵軍の偵察を任せていた兵士が
いかにもただ事ではないという
雰囲気をまといながら、
王子に耳打ちをした。



「今回の敵軍にどうやら
 あのアベル殿がいるようです。」


「な…!?そんなばかな!」


「我々も目を疑いましたが、
 間違いありません…
 黒豹のアベルです。」




「アベルが…?
 なぜ…どうして…!?」



マルスは理解できなかった。
先の戦争では、
最初から最後まで
僕の隣で戦ってくれた
あのアベルが…

祖国を焼き払われた時、
僕の盾として、剣として、
全てを捧げていたあの騎士が…




とても信じられない…






「アベル…」











消え入るような声で
懐かしさと愛しさと、

そして切なさを混ぜて
その名を呼んだ。





















*********

アベマル!
紋章の謎の再会時のお話。
かつての仲間が敵軍にいるとか
どっきどきです!笑
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