novel♯

□わるいむし
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「アイク…近いよ。」

「………」


二人の距離は数センチ。
鼻と鼻がかすめるほど近い。


こうやって見ると、
改めてアイクは整った顔立ちをしてるなぁと思う。
僕より幼いのに、『男』って感じがにじみ出てる。



「どうしたの、急に…」

「………」










わるいむし















アイクが変だ。
いつも変わってるけど…
さっき乱闘が終わってから、
なんか、こう…ずっと僕を見てくる。


別に見られてるからって嫌ってわけじゃないけど…

でも、やっぱ…



「恥ずかしいんですけど。」



「………」



アイクは沈黙を保ち続ける。




「はぁ……」



王子はついに溜息をついた。







「あんたがわるい。」



「…は?」




ついにアイクが沈黙を破ったと思えば、
いきなり僕のせいだって?

冗談じゃないよ、意味がわからない。





「なんでみんなあんたに寄ってくるんだ。」


「…?」



『みんな』って…乱闘のメンバーのことかな。
さっきは、リンクとピット君に、メタナイトさんに、カービィ…
そういえばだいたいの人と毎日会うなぁ。

でも『寄ってくる』って、そんな虫みたいに…




「あんたの顔か、と思って。」


「…顔?」


「あんたの顔がみんな好きなのかと。」



「はぁ…」



顔?顔って…自分だってきれいな顔してるくせに…
それに乱闘のメンバーの人ってみんなカッコイイし。

アイクってやっぱり頭悪いなぁ。




「で、アイクは僕の顔どう思うって?」



「………」



また沈黙。
でも距離は相変わらずなわけで。

恥ずかしいけど、なんか慣れてきたかも。




「……きれい。」




「え…」






前言撤回。
ものすごく恥ずかしい。

きっと今全身真っ赤だと思う。


王子である身分だったから、
「きれい」って言葉はお世辞でもよく言われてた。

だから、そこまで意識したことなくって…



なんでアイクに言われたら、
こんなに…熱いんだろう。






「きれいって…僕男だし、なんか微妙だなぁ。」



とりあえず会話続けないと…
変に意識してるのアイクに気づかれたくない。




「『きれい』に男女は関係あるのか?
 単純にあんたは、きれいだ。」




「そ、それはどうも…」





どうしよう。
心臓がすごく速い。
体中がすごく熱い。

気付かれたくない。見ないで。離れてよ。





「…それと僕が悪いっていうのは何が関係あるの?」



精一杯平常を装って話を続ける。
そうだよ、なんで僕が悪いんだよ。





「あんたがきれいだから、あいつらが寄ってくる。
 それが、いやだ。」


「な、なんでさ…」







「…知らん。
 ただ、嫌なんだ。」





意味わかんないよ。
別に僕が誰と話そうが君には関係ないよね。


関係ないよ…



関係ないのに、

僕こそどうしてドキドキしてるんだ。





「アイク…僕も自分が分からなくて、嫌だ。」






自分が分からなくて。
そう、分からないんだ。


なんでアイクがこんなこと言うのも
分からないんだ。


なんで自分がドキドキしているのかも
分からないんだ。




どうしたらいいか分からなくなって、
思わず目をつぶって、世界を閉ざした。






「お前に『わるいむし』がつかないようにしてやる」



そう言って唇に何かが触れた感じがした。




目をあけると、そこには長いまつ毛…




一瞬の静寂。
一瞬なのに、とても長い。




「アイ、ク…?」


「あんたは周りに気づいてない。
 もっと自覚しろ。」





「ちょっ…なにしてんのさ!」


「なにってキス。」




もうなんだよ、この人。
キス…って、キスって…

でもなんで?
さっきまでドキドキしてたのに、
今すごく安心している。





…僕はこうしてほしかった?






「あんたは『わるいむし』を分かってない。
 だから俺と一緒にいればいい。」



「何言って…」



「俺といれば『わるいむし』は寄ってこない。
 俺もあんたといたい。
 どうだ?利害が一致しただろ?」





そう言うと、やっとアイクが離れていった。






さらりと告白された…よね?

『わるいむし』ってなんだよ。
アイクって、本当頭悪い。





「二人でいれば良いんだね。
 いつも一緒にいるのに、何をいまさら…」





「…本当に分かってないな。
 頭が良いのと鈍いのとは別物だな。」





「頭が悪いアイクには言われたくない。」







「キスは、分かっただろう?」





「キスで、分かったよ。」







ようやく通じた愛のことば。


ようやく分かった。



これが「好き」なんだ。










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アイマル好きだー
どっちも天然だと良い

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