キリリク&記念小説

□20万hitキリリク小説
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カラオケ店に入って、二人客にしては広めの部屋を確保できた。

ソファに腰を落ち着けたと思ったら、河島くんがズボンのポケットを探りながら言う。


「でもそろそろ終わってるかもしんねぇよ? 柚木に電話してみっか?」


胸が高鳴る。

自分の携帯に保存してある、こないだ撮ったツーショット写メが脳裏に浮かんだ。

なんか……シャクだ。

写メを見ても、智哉の名前が出ても、俺だけが……ドキドキしてるなんて。


「いいよぉしなくても。……それとも河島くんが俺と二人じゃイヤなの?」

「な、なぁに言ってんの? さっきの話聞いてた? 春っちとデートなんて自慢のタネなのよ?」


この小悪魔がぁ!! と叫んでケタケタ笑う河島くんを、俺はまじまじと見つめてしまった。


「……柚木と喧嘩でもしたのか?」

いぶかしげな表情に変わった河島くんが身を乗り出して尋ねてくる。


「べ、別に! 柚木とは腐れ縁だもん。なんだかんだでしょっちゅう会うし、ヤツの顔、見飽きたぁ!」

「……ふぅん。いろいろ超越してんなぁ」


感心する河島くんに対し、俺が笑顔で誤魔化した直後に部屋をノックする音がして、店員がドリンクを運んできた。






かわりばんこに何曲か熱唱するうちに、やっぱり河島くんは歌うまいなぁ、俺なんか見劣り(聴き劣り?)するなぁと感じ始めていたとき。

俺の携帯が震えた。

画面を確認すると――智哉からの着信だ。

無視は何かとイカン。河島くんから見ても、俺と智哉は親友関係なんだから。


「と……柚木からだ! ちょ、ちょっと廊下に出るね!」


俺が入れた曲の前奏が始まったところだったので、急遽中止ボタンを押した。


「おー、デートの邪魔したけりゃ来ればっつっといてぇ」


そんな冗談を投げかける河島くんに、俺は苦笑いして部屋を出る。




「……もしもし」

『あ、俺。どこにいるの?』


携帯に登録済みの相手との通話であっても千景?≠ニ確認してくる、ちょっと古臭く慎重な智哉が、珍しくいきなり質問を吹っかけてきた。


「カラオケにいる」

『えっ、なんで? 誰と?』


場所が意外だったのだろう。智哉の声がうわずっている。

……俺のなかの小悪魔≠ェうごめいた。

河島くんと≠チて正直に答えたら――智哉の心に波風は立たぬままだ。

少しくらい――俺の半分でも不安≠感じてくれたっていいじゃんか……

安心させてやれよ≠ニ囁く俺のなかの白い部分に。

黒い部分が勝ってしまった――


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