キリリク&記念小説

□20万hitキリリク小説
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世界挑戦を控えたスーパーライト級ボクサーの公開スパーリングを取材しに行き、そこで河島くんと久しぶりに顔を合わせた。

なんと河島くんは、その選手のスパーリングパートナーとして出向いていたのだ。

一緒に飲みに行ったこともある顔馴染みに遭遇でき、慣れない場所での緊張がかなり解(ほぐ)れた。


「なぁ春っち、今夜あいてる?」


取材を切り上げて編集部に戻ろうとした矢先、そう尋ねてくる河島くん。


「うん、今日の仕事は早めに上がれそうだけど」


だから智哉んちに突撃しよっかな、と思ってたんだけど。


「じゃあカラオケ行かね? 春っち好きそうだし」

「カラオケかー。いいね。そういや河島くんの歌聴いたことない。うまいとは聞いてるけど」


智哉から。


「いやさー。カラオケ好きなヤツと都合がなっかなか合わねぇのよ。深田なんかも大事な試合控えてっし?」

「あはは。わかるわー。深田くんも好きそう」


智哉と行ったとしても河島くんばっか歌ってそうだな……と考えた時。

あぁもう!! 智哉智哉って、俺の世界は智哉で埋め尽くされてんのか!! 自分にイラつく!!


「……行こ行こ! 河島くん、今日は何時ごろから空くの?」


智哉も誘って三人で行きたい、という案を頭から振り払い、俺は彼の誘いにノリノリで賛同した。




夜の八時に、河島くんの行きつけのカラオケ店の近くで待ち合わせた。

彼は出向したジムでスパーリング以外の練習もひととおり出来たため、今日は高橋ジムに寄っていないそうだ。


「寄れたら今夜は春っちとデートぉ≠チてジム仲間に自慢してたと思う」

「えー?」

「あ、柚木は誘いたかったけど、今日あいつスポーツ新聞主催のなんとか賞の授賞式とか入ってたから」

「……忙しいな」

「世界チャンプは何かとなっ」


屈託なく世界チャンプ≠ニ口にする河島くんは、人間ができてるなぁと思う。

豪快に見えて、細やかな気遣いのできる男だ。

こういう人のことを純粋に友人として好きになれるのに……

なぜ俺はあの天然でくの坊≠ニつきあっているのだ……



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