聖域は語る

□第三章
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部屋の電灯を煌々と点けたまま正常位で突っ込まれ、見下ろされているのが今さらながら恥ずかしい。


「電気っ、消そうよ……」

俺の頼みに、智哉は。

「ダメだよ」

「ずりぃよ……お前の顔は、逆光で見えづらいからって……」


すると彼は何を思ったか、律動を止めて俺の背中に腕をまわした


「え? ……ぅあッ!」

俺は体を起こされ、智哉の腰に跨がる座位の姿勢をとらされた。

挿入されたモノがかつてない角度で俺のナカを襲う。


「キツいか……?」

「……っは、うっ……うぅん」

俺は首を横に振って意志を伝えた。

智哉が俺の体を上下に揺らすことで、様々な液によって慣らされた結合部がいやらしい音を聞かせる。

キツいどころか淫猥な快楽を求める気分に拍車がかかった。



「はぁっ、あっ……」

俺は天を仰ぎ、蛍光灯が明るいな、とまぶたの裏で感じながら智哉とカラダを繋げている充足感に浸る。

するとほんの少し下方から彼の声。

「千景、目ぇ開けて……」

俺は言われるままに、薄目を開けて智哉を見下ろす。

「今度は、顔、よく見えるだろ?」

吐息混じりに囁く彼の潤んだ目を、漠然と見返した。


「誰に抱かれてんの?」

「と……もや……あっっ」

何故そんな愚問を?

突き上げられて、俺のナカがお前でいっぱいになってるのを感じざるをえないのに。


「忘れないで。千景を抱けるのは、俺だけだって」

「……あ、たりまえだ……」

「それが、あたりまえじゃないんだ……。油断してたら、千景を狙ってるヤツに……足元をすくわれる」

「か……、考えすぎっ……」

「……ほんと、自己評価低いね……千景は」




……低くて結構。

お前以外の男に、なんかされるなんて考えるのも嫌だ。


でもお前が油断大敵って警戒する分、俺のことを考えてくれる時間が増えるのなら……

どうかそのまま警戒し続けてくれ。


守られなくたって大丈夫だよと肩ひじ張って。

お前は打ち込むべきことに集中しろよって。

できた男ぶるのに疲れたんだ。

俺も……疲れてんだよ智哉……






「智哉……好き……」

俺は智哉の首元に両腕をまわして抱きしめ、顔を見せないようにして告げる。


「俺も、好きだよ」

「い、いちばん?」

「いちばん、好きだよ」



ボクシングよりも……?


どうしても口に出して訊けない。


それだけは。




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