そばにいられるだけでいいのに
□第一章〜卒業
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「あ〜あ、大学もお前と一緒か〜」
合格者の手続きを終えて、駅へ戻る道を並んで歩きながらボヤく。
柚木とは部活が同じだけでなく、高二で同じクラスになり、高校生活のほとんどを一緒に過ごした。
「……なんだ、嫌なのか?」
柚木が口を尖らせて、そんな愚問をする。
なんなの今さら。マジで嫌なわけねぇじゃん。
「別にぃ……」
そう答えながらも、柚木の視線が横から刺さるようで痛いな、と思った。
俺はチラと彼に目線を向け、再び前を見ながらまくし立てた。
「あ〜彼女できっかなぁ。サークルとか入ってさぁ、女の子といろいろ交流持ってさぁ……あっ! どっちが先に彼女できるか競争しようぜ!」
「んなの競うことかな」
柚木の心底呆れたといった様子を見て、俺はムキになって毒づく。
「ふん、どうせ自信がねぇんだろ。モテねぇからな、お前は」
「……負ける気がしない」
「言ったな! 賭けるか!?」
柚木はふて腐れたような表情から一転、フフッと笑いを漏らして言った。
「負けた方が、○屋の焼肉定食おごりね」
あの頃の俺らは
お互いにバカばっか言って笑って
ずっとこんなふうに
一生こんなふうに
していられるんだって
信じてた
柚木……お前が
黙って東京へ出て行っちまうでは……
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